新技術で成功する人の特徴とは?ブロックチェーン業界でチャンスを掴む秘訣

2019.05.20 [月]

新技術で成功する人の特徴とは?ブロックチェーン業界でチャンスを掴む秘訣

「ブロックチェーン業界から第二のマーク・ザッカーバーグが生まれる」-。

香港資本の取引所を運営するTiDealのCEO・Yan Hsieh氏は、挑戦精神を持つ人こそブロックチェーン業界に入るべきだと述べる。

ベンチャースピリットを持ち、学生時代に約12億円を調達したYan Hsieh氏の目には、ブロックチェーン業界の将来はどう見えるのか。

今回、AIre VOICE編集長の大坂氏がYan Hsieh氏と対談し、ブロックチェーンなど新技術を我が物にしてビジネスチャンスにつなげる人材の特徴や、香港や台湾のエリートが選択する進路について伺った。

 

約12億円を調達した学生時代

大坂:本日はお時間いただきありがとうございます。まず、Yan Hsiehさんのご経歴を教えてください。

Yan Hsieh:もともとベンチャー企業に興味を持っていて、大学時代に教授と一緒にエデュケーションテクノロジーに関するビジネスを立ち上げた起業経験があります。

エンジェル投資で1000万米ドル、日本円にして約12億円調達しました。

その会社が成熟してきたタイミングで「これからはIoTやスマートシティが進んでいくから、個人情報を保護するビジネスにチャンスがある」と思い、サイバーセキュリティ企業のトレンドマイクロ社に入社しました。

ベンチャースピリットがあるので、そこでも0から1を生み出す仕事に打ち込みました。

新技術で成功する人の特徴とは?ブロックチェーン業界でチャンスを掴む秘訣3

大坂:現在、香港資本の取引所「TiDeal」を運営なさっていますが、ブロックチェーンや仮想通貨の市場は比較的新しく、未熟な部分もあります。今後はどうなっていくと思われますか?

Yan Hsieh:ブロックチェーンの発展を阻害する最大の壁は、スピードの遅さです。

ペイメントサービスが十分な変化を遂げていません。技術が成熟したら支払い時に選択したデータのシステムを透明化して、お金の動きも正確に追えるようになるのではないかと期待しています。

 

大坂:支払いに使われる技術は比較的新しいものですよね。実際にお仕事なさっていて試行錯誤していることや失敗談を伺いたいです。

Yan Hsieh:取引所は使えば使うほどユーザビリティや価値が向上するので、ユーザー数の増加が最重要課題です。

ブロックチェーンへの参入が遅かった分、苦労していますね。

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参入ハードルが低いと、先進的サービスが生まれやすくなる

大坂:取引所では、どれくらいの通貨をリストアップしているんですか。

Yan Hsieh:現在は30種類くらいです。

後から参入したため海外のユーザー確保にも力を入れ、他の取引所より海外ユーザーの割合が高いですね。もちろん、一番多いのは台湾人ですが。

 

大坂:日本にも取引所がありますが、金融庁が決めた通貨しかリストアップできません。日本のブロックチェーン業界はすごく狭くて、すべての企業が横でつながっているんですね。TiDealにも密接な企業はいますか?

Yan Hsieh:ビットプロという会社と深い親交があり、同社から転職してくる社員も多いです。

業界全体の動きを共有できるので、親密な相手がいると思考をブラッシュアップできますね。

 

大坂:なるほど。台湾のサンドボックス特別法を策定している方にもインタビューしたのですが、ブロックチェーン業界のルール作りに対してはどのようにお考えですか?

Yan Hsieh:私もブロックチェーン産業自治会でご一緒したことがあります。

情報交換するなかで「どうしたら国民の権利を侵害せずに産業を発展させ、企業の利益を生み出せるか」という同じ課題意識を持っていることがわかり、目指す方向は一緒だなと実感しました。

こうした目的のもとにルールが作られれば、業界全体が良い方向に進むと思います。

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大坂:弊社も金融庁の方や経産省の方など、省庁の方と話し合いながらビジネスを進めています。日本にもサンドボックスはあるのですが、サンドボックスに当てはめるまでの過程が結構大変なんです。

Yan Hsieh:どこの国も、サンドボックスに入るのは難しいですよね。

台湾も簡単ではありませんが、海外に比べると参入のハードルは低いです。

台湾はテクノロジー面で海外企業の後追いをする傾向が強いのですが、サンドボックスに関しては進んでいる部分もあり、先進的なサービスが作れるのではないかと思っています。

 

大坂:貴社はアーキテクチャーのアワードを受賞なさっていますが、どういった点が評価されたのですか?

Yan Hsieh:サイドチェーン技術を評価されました。メインチェーンで取引記録を行うと処理が遅くなってしまうので、サイドチェーンで取引し、その一連の取引活動をメインチェーンにまとめて載せるという構造です。

これだけなら誰でもできると思うのですが、パッケージングしたものを暗号化してからメインチェーンに載せるので、自分のプライベートキーがないとアクセスできないようにしています。

パッケージングしたものを最小限に抑えてからメインチェーンに載せられるんですね。

 

大坂:個人のデバイスを経由しない限り、秘密鍵の承認ができない構造になっていますね。個人情報やプライバシーを確保したうえでトランザクションデータを残し、それをパッケージングしてメインチェーンに載せるというのは、安心できる流れだと思います。あらかじめユーザーに「情報を載せていいですか?」と確認することになりますから、セキュリティを強化できる点が優れていると思います。

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「テクノロジーの勉強をしている学生は二流」の香港

大坂:ブロックチェーン業界は新しい業界なので、詳しい人がなかなかいなくて採用できないことに悩んでいまして。台湾や香港でも採用は難しいですか?

Yan Hsieh:金融で国が成り立っている香港では「テクノロジーの勉強をしている学生は二流だ」と言われています。

一流の学生は金融の勉強をしていると。そのため人材確保は難しく、IoT革命を経て実績を積んだ中国人のエンジニアを採用しています。

一方、台湾はテクノロジー産業が多くエンジニアの数も多いので、香港ほどは苦労しません。ただ保守的な国民性なので「今後どうなるかわからない新しい産業に入るより、すでに基盤が固まっている業界でエンジニアになったほうがいい」と考える傾向があります。特にエンジニアは保守的ですね。

 

大坂:日本も同じです。最後に、これからブロックチェーン業界で働きたいと思っている方に向けて、ブロックチェーン業界の魅力を教えてください。

Yan Hsieh:ブロックチェーン業界は、テクノロジー分野のなかでも自分の力を発揮しやすい業界です。

注目度が高いAIなどは地盤が固まりつつあり注力できる会社が限られていて、チャンスを掴みたいなら大企業や有名大学で働く必要があります。

一方、まだルールや方法が決まっていないブロックチェーンならチャンスは平等です。

「自分で0から作りたい」と考えている人におすすめですね。ブロックチェーン業界から第二のマーク・ザッカーバーグが誕生するのではないでしょうか。

 

大坂:わくわくするコメントです。今回は、貴重なお話をありがとうございました。

 

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ライター/萩原かおり 編集/YOSCA 撮影/倉持涼

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