ブロックチェーンの代わりにDAG(Directed Acyclic Graph)と呼ばれる技術を採用した仮想通貨「Obyte(旧・Byteball)」。
Obyteは先日、ブロックチェーン技術を活用したプロダクトやサービスの提供を行うIFA株式会社との業務提携を行った。
そこで、提携のために来日したObyte社のスティーブ・サフロノフ氏、ルーク・エンジェル氏、ベンジャミン・クレーゼ氏にインタビューを敢行。
前編では、DAGとはどのような技術なのか、ByteballからObyteへの名称変更にはどのような意図があったのかを聞いた。
ブロックチェーンにはない、DAGの利点
――本日は、仮想通貨「Obyte(旧・Byteball)」とそれを支える技術などについて伺います。まずは簡単に自己紹介をお願いできますか。
スティーブ:スティーブ・サフロノフです。社内では事業開発を担当しています。
ルーク:ルーク・エンジェルです。Obyteが新たにパートナー提携を結ぶ際の管理を担当していて、今後はIFA社とも一緒に協力していければと思います。
ベンジャミン:ベンジャミンです。Obyteを利用する方々に向けた技術開発を行っています。
――ありがとうございます。さっそくObyteが開発された背景について教えてください。
ルーク:2014年、Obyteの創設者であるトニー・チュリュモフはビットコインに出会い、ビットコインを構築する技術はもちろん、その原理にも非常に感銘を受けました。
特に、高い安全性の中で資産の交換や管理などが行える分散型のプラットフォームがすばらしかった。そこで彼はビットコインの技術や仕組みを分析し、ブロックチェーンの仕組みを改良しようと考えました。
――従来のブロックチェーンだと、何が課題になっていましたか?
ルーク:従来のブロックチェーンは、取引をブロックに編集してチェーンにポストしています。
なぜ取引をわざわざブロックに編集する必要があるのか調べたところ、二重支出を防止するために考えられたことが分かりました。
そこでブロックチェーンの代わりにDAGを採用し、二重支出を防止しながらも取引をチェーンに直接ポストできる仕組みに変えて取引のスピードを上げ、取引にかかる手数料も削減しました。
(写真左:IFA取締役桂城漢大 右:ルーク・エンジェル氏)
約2年かけて2016年のクリスマスに誕生したObyteは、複雑だった取引を簡略化し、さらにマイナーの存在をなくしてマイナーやマイナーへのインセンティブの大きさに依存しない取引管理を可能にしたのです。
Obyte構想の革新さに惹かれて
――スティーブさん、ベンジャミンさん、ルークさんは、それぞれどのようにしてObyteに関わり始めたのですか。
スティーブ:私は2008年にトニーと出会い、ともにいくつかのプロジェクトに携わったことをきっかけに一緒に仕事をしようと決めました。
そんなあるとき、トニーがObyteの構想を話してくれ「やろうよ」と誘われたんです。Obyteはとても革新的だったため、理解するのには少々時間がかかりましたね。
ルーク:私は2006年にスティーブと知り合い、トニーとはスティーブを介して2009年頃に出会いました。
私自身は起業家として12年ほどさまざまなデジタル技術関連のビジネスを立ち上げており、ブロックチェーンや仮想通貨の最新トレンドにも興味を持って研究していました。
そんな折、スティーブに「トニーが新しく発明したプロトコルのObyteは、ブロックチェーンがさらに進化したものだから見てみるべきだよ」と言われたんです。
私も理解には時間がかかりましたが、Obyteの利点を考えれば、そのすばらしさは歴然でした。
今やObyteは仮想通貨に興味を持つ多くの人々にも認知されています。
私はこのプロジェクトに加われたことをうれしく思うと同時に、起業家として培ってきた事業開発の才能を活用して、提携パートナーの新たなビジネスをサポートしていきたいと考えています。
ベンジャミン:私は2011年にマイニングを開始するなど、早い段階から仮想通貨に関心がありました。
Obyteに興味を持ったのは、アプリケーションをダウンロードするだけで相当のお金がもらえると聞いたからです。
ホワイトペーパー(自社製品の優位性を訴求するための解説や他社との比較詳細文書)を読み、その技術面に惚れ込んで開発を始め、スマートコントラクトを使って賭けるスポーツ・ベッティングのチャットボットなどを生み出しています。
Obyteコミュニティの拡大戦略
――現在、Obyteはリブランディングに取り組んでいますよね。その一環としてByteballからObyteに名称変更されましたが、それにはどのような意図があったのですか。
ルーク:Byteballは創設者のトニーが考えた名前で、テクノロジーの機能方法が由来です。
DAG上で行われた取引は一つ前の取引に直接ポストされるため、取引が増えるほどスピードが落ちるブロックチェーンと反対にスピードが上がります。
まるで雪玉が坂道を転がり落ちるように、徐々に早く、大きく、強くなるので「雪玉」をコンセプトとし、データ量を表す単位のbyteとballを合わせてByteballと名付けたのです。
しかしプロジェクトの評判が広まるとほかの文化圏の人々から「名前が妙だ」と言われ、もっと向上させられる名前に変えたいと考えました。
チームやコンサルタントと相談し、Byteballのロゴにも描かれている雪玉と通貨の単位であるbyteを残して「Obyte」に変更したんです。
Oはopennessにも由来し“分散型コミュニティ”とプラットフォーム上に何でもつくり上げられる“機会”のオープンさを示しています。
――そうだったのですね。今やObyteを支持する人々が集ったObyteコミュニティは40万人に達したとお聞きしました。そんなに多くの人をどのように集めたのですか。
ルーク:プロジェクトを開始した当初は、ベンジャミンのような仮想通貨コミュニティのアーリーアダプターをターゲットに、彼らのビットコインアドレスをGbyteウォレットにリンクする目的でGbyteのエアドロップを行っていました。
それがベンジャミンのようにプロジェクトに多大なる貢献をしてくれる人々の引き込みに成功し、Obyteコミュニティの礎になりました。その後、ビットコインへの投機が一般の人々にも広がったことを理由にGbyteのエアドロップをやめ、Obyteのプラットフォーム上でのプロジェクトの立ち上げに興味を持った開発者に向け、助成金プログラムを開始したのです。
この働きかけの目的は、できるだけ多くの活用事例を生み出すことです。今後もスマートコントラクトについて教えるワークショップなどを通して、さらに多くの活用事例を生み出していきたいですね。
――教育面にも目を向けられているのですね。
ルーク:そうです。大変ではありますが、教育では基礎をすべて網羅したいと考えています。
この業界における真のイノベーションは、いつも次世代の人々の手によってもたらされるもの。私たちは彼らに基礎を教えることで、次のイノベーションを起こすための方法を考えてもらいたいのです。
(後編へ続く)
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ライター/三ツ井香菜
カメラマン/重松善樹