2019.03.04 [月]

情報銀行とは何か?基礎知識や仕組みについて解説します

インターネットの発達によって生活が便利になる一方、個人情報の保護が課題となってきました。

日本は欧州などに比べても情報保護の対処が遅れましたが、今回、日本では新たに情報銀行という仕組みが始まることになりました。

しかし、情報銀行とは一体何なのでしょうか?本稿では情報銀行がなんなのか、それによってどんな変化がもたらされるのか、解説していきたいと思います。

 

情報銀行とは何?立ち上げ背景について

まず情報銀行とは何なのでしょうか?

経済産業省によると、『情報銀行(情報利用信用銀行)とは、個人とのデータ活用に関する契約等に基づき、PDS等のシステムを活用して個人のデータを管理するとともに、個人の指示又は予め指定した条件に基づき個人に代わり妥当性を判断の上、データを第三者(他の事業者)に提供する事業。』と定義されています。

これを簡単に説明すると、情報銀行は個人情報を提供してもらい、集約・保管し、それを必要としている事業者へと提供するサービスです。

情報銀行が立ち上がった背景として、近年、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コム)といったアメリカの大企業が、個人情報を集約していることが挙げられます。

その蓄積されたビックデータを利用して個人の趣味嗜好までも特定できることから、情報を支配し独占することで、マーケットまでも支配できるようになりました。
しかし勝手な個人情報の蓄積といった不満や、情報流出といった事件も発生し、それが大きな問題となり、企業から個人情報を取り戻そうという動きが世界中で起こっています。

欧州では2018年5月からGDPR(General Data Promotion Regulation :一般データ保護規則)という個人情報を保護する法律が作られました。
さらに違反をした場合の制裁金は、全世界年間売上高の4%以下または2000万ユーロ以下のいずれかの高い方を支払わなければいけないなど、重い罰則が課せられており、個人情報に対する意識の高さが伺えます。

日本では2016年から政府で個人情報を取り扱うことについて話し合いが始まり、情報銀行もその情報管理の一つの案としてあげられました。
その後議論が重ねられ、2018年には「情報信託機能の認定に関わる指針ver.1.0」が取りまとめられました。

現在、三井UFJ信託銀行や電通、日立といった企業が情報銀行委託候補となっています。日本と欧州で情報管理に関して異なる点は、欧州では情報を個人で管理するのに対して、日本ではその管理を情報銀行へと委託していることが挙げられます。

 

情報銀行の基本的な仕組み

情報銀行とは何か

出所:情報信託機能の認定に関わる指針ver.1.0

情報銀行の仕組みを理解するには、PDSについても理解する必要があります。

PDSというのは「Personal Data Store」を略したものです。
「Personal Data」は個人情報で、「Store」は貯めるといった意味があることから、PDSは個人情報を集約・保管するシステムであることがわかります。

このPDSに個人情報を集め、管理することとなります。しかし、個人情報を提供するかどうかは個人の判断に任されています。
そのため、情報銀行が施行されてから急に自分の情報が管理されるという心配はありません。

情報というのは個人が保管し管理しているものではありません。
一般的に、発生する情報は、購買履歴や検索履歴など、個人が行動して発生したものを事業者が管理しています。

そのため、個人情報を提供するかどうか可否を判断するのは個人ですが、情報を提供するのは事業者であることがわかります。そのため、個人による情報提供の許可とは別に、情報を管理している事業者のデータ提供の協力が必要となることがわかります。

PDSに保管された個人情報を、本人に代わりに他の事業者へ提供してもいいかどうかを判断するのが情報銀行です。

情報銀行が個人情報を管理し、それをその情報が必要としている事業者へと提供します。
情報銀行によって個人情報が提供された場合、その使われた分、情報銀行や事業者から、直接的または間接的に本人に利益が還元されるような仕組みとなっています。

こうして、個人情報をしっかりと管理し、運用することによって、提供された事業者は個人へとより適切にサービスを提供することが可能となります。

 

情報銀行のメリット・デメリット

情報銀行の制度によって生まれる個人のメリットとデメリットについて解説します。

<メリット>

①個人情報を、安全に管理できるようになる
今まではGAFAや大手IT企業によってデータが蓄積され、個人情報が利用されてきました。

人によってはプライバシーが守られていない印象や経験をしあまり良い思いはしなかったこともあるかと思います。
今後は、情報銀行という信頼できる機関があることによって、管理の手間が減りながら、情報が守られた安全な生活を送ることが可能になります。

②情報を売ることができ生活の利便性が上がる
情報が持つ価値が重くみられている今の世の中だからこそ、情報に対して価値付けをし売ることが可能になります。
今までは価値ある情報が知らないところで消費されていましたが、今後は情報を売ることによって、個人が持っている情報という資源を有効活用できるようになります。

さらにその売った情報から、個人個人の生活に役立つようにカスタマイズされたサービスが提供されるようになることも考えられます。z必要な人に必要なサービスが提案されるようになり、より便利な生活が実現できるようになるかもしれません。

例えにはなりますが、健康診断の結果を提供した場合は、自分の体に適した食事法やダイエット方法の提案。
また、趣味の情報で、サッカーが好きで実際購買行動としても〇〇円月に消費しているという情報を提供した場合は、サッカーの試合情報、サッカーグッズの情報、サッカーコミュニティへの招待といった、その人に合った提案がされることも考えられます。情報の利用方法によって、何万通りもの生活の広がりを見せるでしょう。

③ポイントやクーポン等でも報酬を受け取ることができる
お金で報酬が受け取れるのと内容的にはかぶるので説明は省略しますが、データが活用されたら企業から
・特定のサービスで利用できる独自ポイント
・特定のサービスで利用できる割引クーポン
などを受け取ることができます。
企業によっては独自で発行する仮想通貨などになるかもしれません。

独自ポイントやクーポンの方が企業としてはリスクが少ないので、情報銀行の初期の手探り状態ではポイントやクーポンが報酬となることが多そうです。

<デメリット>

デメリットとしては、情報が悪用されるリスクが考えられます。
情報銀行によって提供先が管理されているとはいえ、個人としてはすでに情報が売られている状態です。

一度情報を売ってしまえば、どこで自分の情報が利用されるようになるかわかりません。
メリットの部分だけ見て個人情報を提供してしまえば、思わぬ落とし穴があるかもしれません。さらに情報流出の可能性もあります。

現在はサイバー攻撃によって情報が奪われてしまう時代です。

だからこそ、いくら安全に管理する情報銀行といえども、情報流出のリスクはゼロではないということが言えるでしょう。

 

情報銀行の今後について

2019年3月には最初の情報銀行が生まれることが計画されています。

認定候補となっている企業では、すでにデータを集め、管理するサービスの構築を目指して動いています。

三菱UFJ信託銀行は、「DPRIME」というアプリをリリースし、スマホからアプリを通して、情報を提供するか本人が判断できる仕組みを作っています。

日立製作所では、社員200人を対象に実証実験を行っており、自宅の電気使用量のデータやリストバンド型センサーからデータを取得するなどが行われました。

情報銀行の認定候補の企業が現在6社存在しており、これからも増えていくことが予想されます。
さらに各認定候補によって、情報の対象分野やリターンの方法が異なることから、情報提供者にとってはこれからどの情報銀行を利用するかが問われるようになるでしょう。

情報提供者は、個人情報を提供するのではなく、提供することによってどのようなメリットが自分に返ってくるのか、逆にどんなデメリットが想定されるのかを考えなければいけません。

現在の日本の情報保護の観点から見ると、今までは欧州に比べても弱かったのに対し、情報銀行によって強化されることがわかります。情報銀行によって情報が管理されることにより、情報保護の強化を図ることができます。

これまで不安があった日本の情報に関する環境が変化し、さらに情報を利用した新たな販売方法によって日本のマーケットも成長します。情報銀行は、これから日本の情報社会を支える新たなシステムとなることは間違いないでしょう。

 

まとめ

情報銀行によって、日本の個人情報がより安全に管理されるようになるでしょう。

情報を売ることに利益が出ることから、新たなマーケットができます。
加えて、事業者も個人個人に沿ったサービスを提供できるようになることから、国民の生活はさらに便利になっていくでしょう。

しかしそのメリットだけを見ていると足を掬われてしまいます。情報提供者はその情報がどのように使われるのか、どのような危険性があるのかというリテラシー能力を高める必要があります。

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