フィンテック界隈ではキャッシュレスやブロックチェーンといったキーワードが注目を集めていますが、近年海外を中心にネオバンクとチャレンジャーバンクが台頭しつつあります。
本記事では世界中の期待が高まりつつあるネオバンクとチャレンジャーバンクの動向やこれからに迫ります。
ネオバンクを理解しよう
海外ではネオバンクと呼ばれる新たな価値提供に取り組む銀行を利用する方々が増えています。ネオlバンクの定義は明確にされていませんが、ビジネスモデルは以下の通りです。
ネオバンクは銀行業務ライセンスを取得せず、既存の銀行と提携して、オンライン上で様々な金融サービスを提供するスタートアップ企業またはビジネスモデルを指します。
提携した銀行にネオバンク独自のデジタルインターフェースを構築し、主にモバイルを利用した預金や決済やキャッシュフロー管理といった機能を提供します。
日本ではまだ馴染み深いとはいえないネオバンクは、昨今新しく台頭したサービスであるかのように感じる方が多いでしょう。
しかしネオバンクの台頭は2度目の出来事です。実は米国では第一波がリーマンショック後の2009年頃に既に起こっていましたが、景気回復に合わせて既存の銀行の勢いが増し、影を潜めていました。
それから景気後退の兆候が見え始めた2016年頃、英国や欧州を中心にネオバンクは再び注目を集めるようになりました。
代表的なネオバンクの会社は米国のSimple社やMoven社やChime社が挙げられます。
このようなネオバンクはオンラインのみでサービスを提供し、ユーザーはスマートフォンのモバイルアプリを使って基本的な銀行業務に関するサービスをいつでも受けることができます。
チャレンジャーバンクを理解しよう
次に英国や欧州を中心に流行るチャレンジャーバンクについて説明します。
2016年以後の第二波では新しいチャレンジャーバンクのモデルを採用するスタートアップ企業が増えています。
チャレンジャーバンクは銀行業の登録が必要です。銀行業務ライセンスを取得後に、モバイル上で従来の銀行と同等のサービスを提供するスタートアップ企業またはビジネスモデルを指します。
チャレンジャーバンクではネオバンクのように既存の銀行と提携することなく、完全に独立した形態でサービス展開が可能です。そのため従来の銀行では決して行えなかった新しい付加価値を提供できる可能性を秘めています。
近年ではフィンテックの取り組みとしてチャレンジャーバンクの報道が一般的になされますが、それ以前はチャレンジャーバンクを立ち上げるには大きな障壁がありました。それは各国の銀行業務ライセンスを取得することが困難であったためです。
しかし近年のチャレンジャーバンクの台頭には、金融市場改革を掲げる各国規制当局の緩和を受けて、以前に比べて銀行業務ライセンスを取得しやすくなった背景があります。
代表的なチャレンジャーバンクの会社は英国のRevolut社やMonzo社やドイツのN26が挙げられます。
ネオバンク同様にチャレンジャーバンクでも、スマートフォン上でサービスの申込や使用を全て行えるオンラインサービスのみ提供されています。
ネオバンクとチャレンジャーバンクが注目されている理由
ここでは海外を中心にネオバンクとチャレンジャーバンクが注目を集めている理由をご紹介します。
従来の銀行に対する不満
まずは既存の銀行に対する不満が大きいことが挙げられます。代表例となる要因は従来型の銀行の手数料が高いことです。
何か問題があれば手数料が発生、またある手数料が他の手数料につながるというようにユーザーの貯金がどんどん切り崩されてる現状が問題視されています。
例えば米国では残高を超えて小切手やデビットカードを使ってしまうとOverdraft Feeと呼ばれる手数料が銀行に徴収されますが、2017年には米国で343億ドルもの多額の手数料が徴収されていたことが判明しています。
またATM手数料も年々増加していることが調査でわかっています。
このような大手銀行に対する不満が、ネオバンクやチャレンジャーバンクに顧客が移る要因の一つとなっています。
スマートフォンの普及
続いてスマートフォンの普及です。2009年頃の第一波ではネオバンクはあまり普及しませんでしたが、今回の第二波で注目を浴びる理由の一つにはスマートフォンの普及が関係しているといわれています。
ネオバンクとチャレンジャーバンクはモバイル上のサービスで全て自己完結する仕組みをとっています。
ここ数年の間にスマートフォンは私たちの日常生活の一部となり、モバイル上のサービスを利用してショッピングや課金サービスを楽しむ人たちが増えました。
またスマートフォンの活用に抵抗のない若年層の存在が新しい銀行モデルのあり方を後押ししています。
若年層はモバイル上で送金や決済をすることに慣れており、オンラインサービスの利用に対する期待は高まる一方です。
若年層やモバイルに慣れている人からすると、わざわざ支店に出向いてATMに並ぶよりも自宅や外出中にスマートフォンを使ってスムーズに送金できる手段を好みます。
このような利便性からネオバンクやチャレンジャーバンクを利用するユーザーも増えています。
ネオバンクやチャレンジャーバンクを利用するメリット
従来型の銀行に比べて、ネオバンクやチャレンジャーバンクを利用するメリットは数多くあります。
ここではいくつかのメリットを紹介します。
・手数料コストの削減
従来型の銀行では人手が必要であった業務がデジタル化するため、ユーザーにかかるコストは少なくなるでしょう。
例えば従来はさまざまな手数料が徴収されていましたが、新しいモデルの銀行では運営コストが下がるため、サービスにかかる手数料は多くの場合において安価もしくは無料で提供されることが予想されます。
場合によっては預金金利が高くなるかもしれません。
このようにネオバンクやチャレンジャーバンクでは、従来の銀行では提供できなかったサービスを享受できる可能性が考えられます。
・支払いがスムーズ
新しいモデルの銀行では銀行に足を運んだりATMに駆け込む必要はありません。スマートフォンを利用して全ての業務が完結するため、いつでも好きなときにモバイルアプリ上で送金や決済を行えます。
・利便性の向上
ネオバンクやチャレンジャーバンクはモバイルアプリ上で顧客のニーズに応じてさまざまなサービスを展開しています。
例えば、手軽に口座状況が確認できることはもちろん、デビットカードとモバイルアプリを連携して購買履歴を即時反映させたり、財布やカードが紛失や盗難にあった時にアプリ上でカードの利用停止を行えるといった便利なサービスが提供されています。
世界のネオバンクの動向
米国では既存の銀行を抑えて、ネオバンクの存在感が増しています。
サンフランシスコを本拠とするネオバンク最大手のChime社は、200万のオンライン当座預金口座を開設し、毎月の新規顧客は大手銀行であるウェルズ・ファーゴやシティバンクよりも多いことがわかりました。
またネオバンクは多くの資金調達にも成功しています。
CBインサイツ社の調査によると、2018年は前年比に比べて約4倍、2015年比較では約10倍に相当する資金が集まっていることが明かされました。
ゴールドマンサックスやスクエア社も同業界に参入し始めており、世界中の投資家や企業からも多くの期待が寄せられていることがわかります。
もちろん既存の銀行はこのような状況をただ見ているわけではなく、既存の銀行が新興サービスを買収するケースも見られます。
スペイン銀行大手BBVAはフィンテック業界のスタートアップ企業の投資や買収に積極的です。ここ数年で6社の買収に成功しており、そのうちの1社は老舗ネオバンクであるSimple社を買収しています。
ベンチャーキャピタリストも現在こういった企業に資金を注いでいます。
CBインサイツ社のデータによれば、2018年の現時点でアメリカのネオバンクはすでに昨年比4倍の資金を得ており、これは2015年との比較では10倍に相当します。
日本におけるネオバンク
ネオバンクの主流は海外ですが、日本でもネオバンクのようなスタートアップ企業は存在しつつあります。
新しい銀行モデルの後押しとなった要因は2018年6月に施行された改正銀行法でした。銀行はAPIを公開することで、フィンテック企業でも銀行のデータを自由に活用できるようになりました。
既存の銀行も新サービスを生み出すフィンテック企業と協業することで、新しい取り組みに積極的に参加しています。
今後は日本でも新しいサービスが浸透していく日はそう遠くないといえるかもしれません。
まとめ
ネオバンクとチャレンジャーバンクは従来の銀行業務をデジタル化して新たな価値を提供しようと取り組んでいます。
まだ日本では話題に上がることがそれほど多くありませんが、欧米のように今後は新しい銀行モデルが徐々に広がっていく可能性があります。
新しい銀行モデルが世の中に普及すれば、わざわざ銀行の支店やATMに出向く必要もなく、スマートフォンのアプリ上で預金も送金も完結します。
私たちの生活はより豊かにより便利になっていく可能性を秘めているといえるでしょう。