Keychainが開発及び提案するデジタルアセットプラットフォーム「Keychain DAP」は、独自のデジタルアセットを簡単に作成・取引・保管できるサービスです。
企業はKeychain DAPを利用することにより、短期間でデジタルアセットを発行し、新規ビジネス開始時のコストを削減することができます。
Keychain DAPの概要やメリット、利用例に迫ります。
デジタルアセットプラットフォーム(DAP)を理解しよう
Keychain DAPはブロックチェーン技術をベースに金融機関や製造物流向けに、データのセキュリティサービスを提供する合同会社Keychainにより開発されました。
同社は2018年5月中旬に起きた仮想通貨モナコインへの攻撃について共同創業者兼CEOのジョナサン・ホープ氏が解説を行うなど、ブロックチェーン技術やその活用について卓越した知識と経験を持つ企業として知られています。
そして2018年9月26日、同社はブロックチェーンに関する知見を生かし、Keychain DAPをリリースするに至りました。
DAPの概要
Keychainが提案するDAPは、自社内の法定通貨建資産やデータ、知的財産などの資産を電子化し、デジタルアセットを簡単かつ迅速に発行及び保管できるサービスです。
さらにB2BやB2Cといった顧客向け、P2Pのような顧客同士での取引・決済にも対応しています。
わかりやすい例で示すと、企業はDAPを活用することでデジタルマネーやクレジット/ポイントやデジタルグッズなど独自のデジタル資産を容易に作り出すことができるようになります。
企業側で独自にデジタルアセットの仕様を決めて、その発行や配布及び適用範囲、利用及び管理方法の取り決めがスムーズに行えるようになるのです。
DAPがブロックチェーン技術を活用したデジタルアセットプラットフォームであると聞けば、なんだか難しいイメージを持ってしまい、使いこなすには相応の時間を要するように感じてしまうかもしれません。
しかしKeychain DAPを利用する際に、プログラミング技術の優れたエンジニアやブロックチェーンの専門家にサポートを要請する必要は一切ありません。企業側はパラメータを入力するなど簡単な操作で取引アプリを利用することができる仕様です。
またKeychainの提供するデジタルアセットはOSやデバイスに関わらず搭載可能です。つまりAndoroid、iOS、WindowsなどOSを選ばず、さらにスマホやパソコンやデジタルウォッチなどあらゆるデバイスに対応しています。
Keychain DAPのメリット
続いてKeychain DAPを利用するメリットについてご紹介します。
スピーディーな発行かつコスト削減が可能
前述の項目の通りにKeychain DAPを利用すれば、企業はデジタルアセットを簡単かつ短期間で発行できます。
そのため新規ビジネスの開始コストを大幅に削減できます。さらに規制の厳しいICOを行う必要がなくなり、仮想通貨に関する法律に触れるリスクを減らせます。
データのセキュリティを高められる
DAPはデータを分散して管理するブロックチェーン技術を利用しているため、データが信頼性の不明な第三者のネットワークやインフラ基盤を通過する場合でも、データの真正性や信頼性を維持することができます。
DApps(分散型アプリケーション)との違い
また似たようなサービスにDAppsがあります。DAppsとは「 Decentralized Applications 」の略称であり、分散型アプリケーションを意味する用語です。
DAppsを利用すると、中央管理者を介在させずアプリケーションを運営及び管理することができます。
DAppsを実行する上で不可欠な技術がブロックチェーンとスマートコントラクトです。
スマートコントラクトはある条件が満たされると契約を自動的に執行させることのできるプログラムであり、分散型台帳であるブロックチェーンを利用することで機能しています。DAppsを実行させるには双方の技術が欠かせません。
このようなDAppsとKeychain DAPの違いには次の2点が挙げられます。下記の点でKeychain DAPはDAppsよりも優位性があります。
・DAPではスマートコントラクトが不要
Keychain DAPではイーサリアムのDAppsのようにスマートコントラクトの作成は必要ありません。DAPを利用することで、迅速かつ安価でデジタルアセットを発行及び管理できます。
DAppsのスマートコントラクトには多くの課題が含まれます。課題の一つは取引スピードの遅さです。トランザクション処理や合意形成に時間がかかり、決済のような即時性が求められる取引に対応できないケースがあります。
ブロックチェーン基盤のネットワークはさまざまな場所に分散して点在するP2Pのノードで構成されています。
それぞれのノードの処理速度には速いものもあれば遅いものもあり、どうしても差が出てしまいます。
低スペックのノードがネットワーク全体の処理速度に悪影響を及ぼし、結果的にハイスペックなノードに計算能力が集中してしまう事象が起こってしまっているのが現状です。
将来的に多くのスマートコントラクトを同時に処理していくためには、処理速度の向上が喫緊の課題といわれています。
しかしDAPでは非中央集権型のアプリケーションを実行する際にスマートコントラクトの作成が不要ですので、スピーディーに取引を行うことができるのです。
・DAPはスケーラビリティがある
結論を先に述べると、Keychain DAPはスケーラビリティがある一方で、イーサリアムのようなDAppsのスマートコントラクトはスケーラビリティが低いといわれます。
スケーラビリティとはIT分野において、システムやネットワークなどの拡張性を指す用語です。
システムの負荷や仕事の増大などに対して、どれくらい適応できる能力があるかや性能を向上及び拡張できるかを表すために使われます。
DAppsのスマートコントラクトでは度々スケーラビリティ問題が示唆されており、解決には未だに至っていません。
スケーラビリティ問題はユーザー数が増えてブロックチェーンのネットワーク利用者が増大した時に起こります。その結果としてコンピュータの処理速度が低下して取引に多大な時間がかかったり、手数料が高騰してしまうなどの事象が発生しています。
しかし、DAPはDAppsよりもスケーラビリティがあるため、ユーザーの増加に伴う取引遅延が発生することはありません。将来的にネットワークが増大したとしても、多くのトランザクション処理に低コストで対応することができるといわれています。
・外部組織でも簡単に閲覧可能である
Keychain DAPには外部組織が容易に取引状況を監査・閲覧できる機能が備わっています。
まずは監査証跡機能です。監督官庁や監査法人がリアルタイムでデジタルアセットの取引状況を監査・検査することができます。
またコンプライアンス対応の機能も提供しています。外部組織に対してデジタルアセットの取引履歴に関する閲覧や報告を必要な範囲で行うことができます。
もちろんどちらの機能を利用する上でも、データは分散型台帳システムであるブロックチェーンを使って管理しているため、セキュリティを維持した状態での監査・閲覧が可能です。
Keychain DAPの利用例
ここではKeychain DAPの特徴や具体的なユースケースを紹介します。
今後デジタルアセットプラットフォームが利用可能
公式ページによると、Keychain DAPを利用すれば以下のようなことが可能になると記載があります。
・トークン発行者が供給量や利用環境を設定できる
・商品コモディティをベースにしたアセット供給
・ファンジブルおよびノン・ファンジブルアセットが双方作成可能
・発行者による取引者の調整、取引ログの監査設定
・P2P取引(Keychain DPI対応のIoT、ロボット、コネクティッドカー、モバイル間)
取引市場のインフラとしての利用例
以下のような使い方が考えられます。
・地域通貨や国家レベルのデジタル通貨
・ロイヤリティやポイントシステム
・不動産登記
・デジタル証券、小切手、約束手形
・ゲームグッズ、コレクションアイテムの交換や取引
・石油やガスなどのエネルギー、CO2排出権取引のクレジット債権
・電子記録債権の取引および決済
・シェアリングエコノミー
・音楽、アート、書籍などの知的財産データの取引
まとめ
DAPを利用すれば、スマートコンラクトよりも簡単かつ安価にデジタルアセットを生成し管理できることができます。
企業側はKeychain DAPを導入すれば、独自の経済圏を作り出すことが可能となり、将来的により多くのマネタイズ方法を検討することができるようになるでしょう。