信用スコアは日本社会でも普及するのか?信用力スコアリングサービスに迫る

2019.04.04 [木]

信用スコアは日本社会でも普及するのか?信用力スコアリングサービスに迫る

信用スコアという言葉を耳にしたことはありますか。

信用スコアとは、個人の信用力を数値化したもので、中国やアメリカでは浸透しつつある概念です。

日本でも2019年時点で、みずほ銀行やYahoo!、NTTドコモ、LINEなどの10社が信用力スコアリングサービスに参入を表明しています。

日本でも普及するかもしれない「信用スコア」。その仕組みやメリット、代表的なサービスなどをご紹介します。

 

これまでの信用情報について

これまで日本人は、自分の信用力について意識をする場面があまり多くなかったのではないでしょうか。ここでは、日本での信用情報の把握方法について考えてみましょう。

勤務先で個人の信用をはかることができた日本

日本は長らく、就職してから定年まで一つの会社で働く、終身雇用制度を基本とする社会でした。

会社から得られる給料は、税金や保険料を天引きされた形で銀行口座に振り込まれます。こういったシステムが整っているのは、実は世界的に見ても日本だけです。

このような仕組みが整っているからこそ、例えば住宅ローンを組む、家を借りる、などの信用が必要な場面では、年収や勤め先を提出すれば、その人のある程度の信用力が把握できます。

そのため、日本では個人の信用力をあえて別の手段で確認することや、把握する必要がありませんでした。

会社名だけでは信用力がはかれない時代に

しかし、20代や30代の若い世代では転職を経験する人も多く、終身雇用制度は崩れています。会社員ではなく、フリーランスや起業を選択する人も増えると予想されています。

そのため、会社名や年収だけでは個人の信用力をはかることが難しい時代になりました。日本でも海外のように、信用力をはかることができる新しい基準の導入が必要になるのではと言われています。

 

信用スコアの仕組み

ここでは、信用スコアの仕組みについて解説します。

信用スコアとは何か

信用スコアを一言で表すと、「個人の信用力を見える化したもの」です。個人の信用力を、その人に関するデータを基にしてスコアリングして信用スコアをつけます。

信用スコアが高ければ、社会的に信用できる人間だと見なされ、逆にスコアが低ければ信用がないと判断されます。

信用力に影響するデータは、信用スコアリングサービスによって異なります。

中国の芝麻信用の場合、学歴、クレジットカードの支払い履歴、携帯電話料金の支払い履歴、公共料金納付履歴、社会保険加入状況、納税状況などが信用スコアに影響するデータとして挙げられます。

さらには、ネットショッピングや資産運用、交友関係などのデータも利用されているとされます。

機械学習やAI技術に支えられる信用スコア

信用スコアは個人のデータを、独自のアルゴリズムでスコアリングして出されています。

このアルゴリスムの仕組み自体は、どの信用力スコアリングサービスも公表していませんが、スコアリングにはAIや機械学習の技術が導入されていると言われています。

中国やアメリカで、これほどまでに信用スコアが浸透し始めている背景にもAIを始めとするIT技術の進化があるのです。

信用力スコアリングサービスの3つのフェーズ

信用力スコアリングサービスの仕組みには3つのフェーズがあります。

スコアリングの元となるデータを収集するフェーズ、独自のアルゴリズムでスコアリングを行うフェーズ、そしてその信用スコアを活用するフェーズです。

スコアリングの元となるデータの収集には、信用力スコアリングサービス企業が自社で保有しているものや他の信用期間との連携によって行われます。

これらの情報収集には、基本的にはスコアリングされる個人の了解のもと行われるのが好ましいとされています。

スコアリングを行うフェーズでは、集めたデータが信用力を定めるためにどれほどの影響力のあるデータなのかを考慮し、独自のアルゴリズムでスコアリングされます。

そして、導き出された信用スコアを実際に活用するフェーズでは、様々な分野での信用スコアの活用が期待されています。例えば、中国の事例では、個人は自分の信用スコアをもとに、ローン借り入れの際の金利を安くすることもできます。

 

信用スコアのメリット

信用スコアと聞くと自分の行動や消費・支払い情報が管理されてしまうような気がして構えてしまいますが、メリットは何があるのでしょうか。

信用スコアが普及した場合のメリットをご紹介します。

信用スコアを意識することで健全な社会が作られる

信用スコアが浸透した社会では、個人は自分のスコアを気にすることになります。そのため、信用に響く不正な取引や、借金や支払いの滞納なども減るとされ、多くの人がマナーを守るようになると見込まれています。

このため、信用スコアは健全な社会の構築に良い影響があると期待されています。

信用スコアが高ければ、低金利でローンを組むことができる

信用スコアが高ければ、住宅ローンなどの借り入れの際に低金利となるメリットがあります。

これまでも、例えば消費者金融や銀行系のカードローンなどで、お金を借りる際には、過去の借り入れ履歴や勤め先、年収などで金利が決定しました。

しかし信用スコアを参考にする場合には、勤め先や年収だけではなく、携帯電話やカードの支払い状況、交友関係なども金利に影響してくるとみられています。

サービスの利用が便利になることも

中国の芝麻信用の事例では、信用スコアが規定の水準に達すれば、レンタカーを利用する際のデポジットが不要になり、後払いで手軽にレンタカーを借りることができるようになります。

このように高い水準の信用スコアを所有していれば、一般社会でのサービスでの優遇があるなど、便利になる点がメリットの一つです。

 

信用スコアが低いとどうなる?

一方で、信用スコアが低い場合どのような影響があるのでしょうか。

サービスを受けるときにデポジットが必要なことも

信用スコアが低い場合、レンタカーを利用する際や、インターネットからホテルの予約を取った際、デポジット(保証金)を事前に求められてしまうことがあります。

また、信用スコアが浸透している中国では、信用スコアが低いと、スコアが高い人と比べてサービス料金自体が割高になる場合もあるようです。

会員制コミュニティの入会が制限されてしまうことも

信用スコアが極端に低いと、婚活などのマッチング系のアプリ、またはシェアリングエコノミーなど個人間でのやり取りをするコミュニティへの入会が制限されてしまうことがあります。

実際に中国では、信用スコアが高い人専用のアプリやコミュニティが存在しており、信用スコアが低いと入会ができません。

お金を借りる際に金利が高くなる/借り入れ可能額に影響がある

信用スコアが高い人は、ローンを組む際に金利が優遇されるとご紹介しましたが、スコアが低い場合には、逆に通常より金利が高くなってしまう場合があります。

また、日本ではNTTドコモが、自社の回線契約者の回線利用時間や支払い履歴などの情報を活用し、金融機関に信用スコア提供するサービスを始めています。提供された信用スコアによって金融機関のローン審査が行われます。

信用スコアが低い場合、このようなローン審査が不利となり借り入れ額に影響を及ぼす可能性があります。(NTTドコモのサービスにおいて、信用スコアの提供は、個人の同意があった場合のみ)

 

代表的な信用力スコアリングサービス

日本の信用力スコアリングサービスは、サービスの立ち上げ段階でまだまだ普及に至っていません。しかし中国やアメリカでは信用スコアの概念は浸透しており、大きな影響力を持つ民間のサービスが誕生しています。

ここでは、代表的なサービス、中国の芝麻信用と、アメリカのクレジットスコア(FICOスコア)をご紹介します。

芝麻信用(ジーマ信用)

EC大手のアリババの決済サービス、アリペイが展開する信用力スコアリングサービスが芝麻信用です。

芝麻信用は中国の中央銀行である中国人民銀行が認定しているほか、中国政府が後押ししていることもあり、ブームが起こり爆発的に国民に浸透しました。

芝麻信用の信用スコアは取引や採用試験、ローン、結婚相手探し、各種サービスの利用など様々な場面で参考にされており、すでに社会的に普及していると言える状態です。

点数は350点〜950点でスコアリングされ、600点以上が良いと判断され、傘や携帯の充電器の無料貸し出しサービスなども登場しています。

700点を超える高スコアであれば、シンガポールのビザ取得までも優遇されます。

クレジットスコア(FICOスコア)

アメリカでは日本と違いクレジットカード決済が主流です。お金を借りる時や新しくクレジットカードを作るとき、個人の信用情報を参考にします。

そのとき参考にされるのがクレジットスコアです。クレジットスコアは民間の会社によって算出されていますが、代表的なサービスがFICOスコアです。

FICOスコアは300点〜850点でスコアリングされ、このスコアが高いほどに、優遇された金利で住宅ローンなどを借りることができるようになります。

スコアは、クレジットカードやローンの支払い履歴や借り入れ残高、クレジットカードのヒストリーの長さなどから導き出されます。また、新しいクレジットカードを何枚も作ることや分割払いを行うとスコアに悪い影響を与えます。

日本でもこのようなクレジットスコアは存在しますが、アメリカの場合は先に紹介した中国の信用スコアのように、スコアが就職試験や入居審査にも大きな影響があります。

さらに日常では、電気やガスの契約時にもスコアが考慮され、スコアが低いとデポジットを取られてしまうこともあります。

 

まとめ

この記事では、信用スコアの仕組みやメリット、海外の代表的なサービスなどをご紹介しました。

日本でも、NTTドコモやYahoo!など個人に関するビッグデータを扱う大手企業が続々と参入しています。法律や個人情報保護の観点から、日本でこのような信用力スコアリングサービスが普及にするかどうかは専門家の意見も分かれているようです。

もし普及した場合、各種公共利用金や税金、クレジットカードの支払いなどを、期日までにきちんと行っている人であれば、高い信用スコアを得ることができます。

日常から、マナーを守り、支払いなどをきちんと行っておくに越したことはありませんね。

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