IRR(内部収益率)とは?利回りとの違いや計算式など基礎を教えます

2019.04.03 [水]

IRR(内部収益率)とは?利回りとの違いや計算式など基礎を教えます

投資判断に用いられる収益率に関する指標で、とても便利なIRR(内部収益率)という方法をご存知でしょうか?

「利回り」とは違い、様々な投資のシーンで活用することができ、また複数の投資商品の収益率を一目で比較することができる優れた指標です。

ここではあらゆる投資商品の収益率を比較できる指標として投資家が活用しているIRRについて、分かりやすく解説していきます。

一見難しそうな単語や説明が並んでいますが、じっくりと読んでいただければ、IRRの基礎や利回りとの違いが理解していただけると思います。

IRR(内部収益率)とは?

投資リターンを図る方法の一つに「IRR(内部収益率)」があります。

IRRの定義を調べてみると「正味現在価値(NPV)がゼロになる割引率」となっていますが、この定義ではちょっと分かりづらいですよね。

IRRをもっと簡単にいうと「定期預金を複利運用した時の利回り」のことで、「金利」と近いものがあります。

つまり「投資金=預金」と考えた時に「投資回収金=償還」となり、この預金と償還から金利を計算することがIRRの計算という事になります。

分かりやすく簡単にIRRを説明したとしても、どうしても難しい言葉が並んでしまうのは、IRRというものが世間一般的な指標というよりは、プロの投資家や企業の投資判断の材料として他のいくつかの指標と組み合わせて使われているものなので、どうしても専門用語などの難しい言葉が連続してしまいます。

しかし、これから投資の世界にチャレンジしていく方にとっては、IRRは覚えておくべき重要な指標となるので、さらに分かりやすく実例も加えて説明をしていきたいと思います。

 

IRR(内部収益率)の計算式

IRRをさらにシンプルに説明すると「投資期間内における1年あたりの利回り」となります。この例を「100万円を利回り1%の定期預金に預ける」と「100万円の株式投資」で比較しながら解説していきます。

100万円を利回り1%の定期預金に預けた場合

100万円を利回り1%の定期預金に預けると3年後には100万円×1%×3年で3万円の利子が付きますね。

この定期預金という投資商品の投資期間1年間における利回り1%がIRRです。

「じゃあ利回りでいいのでは?」と思われる方が多いと思いますので、次に株式投資の例について説明します。

投資期間内における1年あたりの利回りの場合

株価100万円の株を購入しました。この株の配当金として初年度に2万円、2年目には1万円、3年目は0円でした。

そして3年後に同じ株価の100万円で売却したとします。

さて、この株式投資の例ではIRRは何%となるでしょうか?

利回りの考えでいくと、先ほどの定期預金の例と同じく1%となりますね。100万円の投資に対して定期預金、株式投資のどちらも3年間で3万円のキャッシュフローが得られたからです。

しかしこの株式投資における例でのIRRは「約1.01%」となります。ここにIRRの本質が隠れています。

定期預金と株式投資の例を比較してみると、株式投資の方が初年度2万円の配当金を得ているので、定期預金に比べ早い期間に1万円プラスのキャッシュフローが生じています。

実はIRRではより早い時期に利益を得た方が価値が高いという結果になります。

なぜトータルのキャッシュフローは同じなのに価値が変わるのか?この疑問の答えは「人の感覚」にヒントがあります。

例えば「今すぐ100万円プレゼント」と「3年後に100万円プレゼント」という2つのキャンペーンがあるとして、あなたはどちらを選択しますか?この2つでしたら、だいたいの人が「今すぐ」を選ぶことは明らかです。

ここでIRRの概念を理解するために必要な「割引率」というワードが出てきます。

人はほとんど全員が未来の価値を現在の価値に置き換えるときに割り引いて考えるのが通常であり、それを専門用語で「割引率」というのです。

この「人の感覚」と同じようにIRRの計算にも割引率が含まれており、より早く利益を上げられる方が割引率の分結果が良くなるという考えなのです。

ここでIRRの計算式を紹介します。計算式は以下の通りです。

IRRの計算式

(参考資料:Wikipedia)

上記の計算式にある記号の説明は以下の通りです。

C₀:初期キャッシュフローの値(キャッシュアウト100万円の場合は‐100万円)

C₁~Cn:n年目のキャッシュフローの総額

r:IRR

この計算式でIRRを求めるには、初期投資額であるC₀とキャッシュフローの値であるCnが分かれば求めることができます。

この計算式において、キャッシュフローの値を年数の乗数で割っていることからも分かるように、IRRでは割引率を考慮して、キャッシュフローの値を中心に投資期間内のどれだけの利回りを得られたかの計算であると言えます。

この手計算するにはかなりややこしいIRRですが、じつはエクセル関数を使うことで、誰でも簡単にIRRを計算することができます。エクセル関数で「=IRR(キャッシュフロー範囲)」と指定するだけですので、方程式の計算が苦手な方は一度試してみてください。

 

IRR(内部収益率)の利用シーン

ここまで説明してきた通り、IRRは「割引率を考え、投資期間内のキャッシュフローを軸に計算した利回り」であることが分かっていただけたかと思いますが、では主にどのようなシーンでIRRは利用されるのでしょうか?

IRRは投資の効率性を測る有効な指標であり、その投資が年ごとに安定した利回りが得られない商品である場合、特に有効な指標としての力を発揮します。

また、投資期間が異なる複数の投資商品を比較し、最も収益性の高い投資先を判断する際にもIRRはとても有効な指標となります。

例えば不動産投資は株主配当金や銀行預金の利息のような安定したキャッシュフローと違い、「購入」「管理運営」「売却」のような各場面においてイレギュラーなキャッシュフローが生じるためIRRと相性がとても良いのです。

 

IRR(内部収益率)と利回りの違い

では具体的にIRRと利回りはどのように違うのかを詳しく解説していきます。

毎年安定して収益が得られる投資商品の場合に、利回りを収益率を測る指標として使用する場合があります。収益が毎年一緒な商品だけであれば利回りで計算しても良いと思います。

ただ、毎年の収益が異なる投資商品の場合に利回りを指標として計算すると、1年目に得たお金も10年後に得たお金も同じ価値となります。利回りには時間的概念がないからです。

本当に1年目に得たお金と10年後に得たお金は価値が同じでしょうか?

IRRでは時間軸を考慮し、得たキャッシュフローはすべて再投資し複利運用する前提で計算しています。つまり1年目に多くのキャッシュフローを得ることができれば、それだけ多くのお金を翌年以降に複利運用できるので価値が高いという事です。

その価値を割引率という形で数値化し、本来の金利を算出することで、期間が異なる投資商品でも比較できるようにしたものがIRRとなります。

 

定期預金と株式投資のIRR(内部収益率)の例

ここまでの説明を踏まえて、改めて定期預金と株式投資のIRRの例を挙げてみたいと思います。

定期預金の場合

Aさんは金利3%の定期預金に3年間お金を預けました。

この場合のキャッシュフローは0年目に‐100万円、1年目に金利分+3万円、2年目に+3万円、3年目に3万円と元本を戻して9万円です。

株式投資の場合

Bさんは株価100万円の株を購入しました。

この場合のキャッシュフローは0年目に‐100万円、1年目に配当金+7万円、2年目に2万円、3年目に0円の配当を得た時点で、買値と同じ株価の100万円で売却をしたので9万円です。

このふたつのパターンにおいてキャッシュフローは同額の9万円となり、平均利回りは3.0%ですが、IRRはどうでしょうか?

定期預金の例では毎年同額の金利が安定して発生しているのでIRRは3.00%となりますが、株式投資のケースではIRRは3.07%となります。

これはキャッシュフローは同額であっても、1年目に得たお金に差があり、そこが時間軸を考慮した考え方のIRRの特徴となっています。

つまりより早くお金を得ることができたBさんの方が複利運用することができるため、キャッシュフローとしては同額でもIRRの考え方ではもらったお金の価値が高いという事になります。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?

ここではIRRの基本的な考え方や利回りとの違いを説明させていただきました。

IRRは投資、特にキャッシュフローが毎年イレギュラーな商品に対して非常に有効な指標となっています。

また、複数の投資商品の収益率を比較する際にも重要な投資指標として使われることが多いものです。

利回りと違い、「割引率」、つまり、投資期間である時間軸を考慮し、複利運用することも視野に入れた現実的な指標と言えるのではないかと思います。

多くの投資家は投資期間のキャッシュフローからIRRを計算し、IRRが一定の値を超えているか否かを投資の判断材料にします。

これから投資の世界にチャレンジする方や、既に投資を行っているが利回りで計算していた人はぜひIRRの理解を深めて役立たせていただければと思います。

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