記録内容の正当性を検証する設計思想「トラストレス」

2019.04.01 [月]

記録内容の正当性を検証する設計思想「トラストレス」

暗号通貨ではよく「トラストレス」という言葉が使われます。

暗号通貨の基盤技術であるブロックチェーンの利用によって、特定の第三者を信頼することなく、価値の移転が可能になりました。

本記事ではGoogleやAmazon、FacebookやAppleなど一部の大企業が力を発揮する時代から、ブロックチェーンによって大きな変化をもたらすきっかけになるトラストレスについて、暗号通貨におけるトラストレスの言葉の意味や仕組み、トラストレスによる取引の需要の高まりの経緯について解説します。

 

暗号通貨のトラストレスの意味

暗号通貨での「トラストレス」とは、特定の誰かを信頼することなく、ブロックチェーン技術を利用して安心安全な取引を実現できるという意味になります。

通常の私たちの日常生活では、人が何かの行動をするとき、行動対象に一定の信用をしていることがわかります。

例えば銀行にお金を預けようと思うとき、あなたはその銀行を信用することになります。信用できない銀行には、誰もお金を預けようとは考えません。

信用できる第三者を「Trusted third party」といいます。日常生活のすべてにおいて信用できる第三者があり、この第三者の存在によって私たちは安心して買い物や預金、各種の契約をおこなうことができます。

しかしブロックチェーン技術が発展することで、信頼できる第三者を介することなく取引をできるようになりました。ブロックチェーンでは絶対的な第三者は存在せず、多数のマイナーやすべての監視者によって公正な取引を実現できます。

 

トラストレスはなぜ評価される?

個人間取引の強化

通常、対面での個人対個人間の取引は、取引者どうしが直接おこないます。

対面での取引では不正ができない環境となりますが、当事者が対面しない環境では、誰かが信頼できる第三者として働くことが必要になります。

ブロックチェーンの概念が存在しなかった時代は、銀行という国が認めた機関が仲介をすることで、一定の信頼を持つことができました。

そしてBTCの基盤となる技術のブロックチェーン技術が実装されたことで、どれだけ遠隔な場所にいる個人同士でも、トラストレスで安心できる取引が実現します。仲介者が介在しない環境での、取引の公平性を確保するために、トラストレスは必須の要素になっています。

スマートコントラクトというブロックチェーンを利用した契約方法も広まることで、さらに個人間での「もの」や「こと」の契約がおこなえるようになります。

国の規制によるブロックチェーンの需要増加

信頼できる国家のもとでは、銀行を安心して利用することができますが、経済破綻をおこしたり経済的な引き締めをおこなう国のもとでは、国が発行する法定通貨が信頼されないこともあります。

例として2013年にはギリシャの金融危機により、預金の引出制限がかかりました。保有資産を守るために、ユーロをBTCに移動する動きが強まりました。

また中国では、人民元の国際送金が大きく規制されていました。人民元を非難させ別の通貨にする橋渡しとして、BTCが多く利用されました。

中国で暗号通貨が規制を受ける2017年9月までは、BTC取引の9割以上が人民元建てでおこなわれたようです。

このように国の保証がなくても安心して取引ができるシステムとして、トラストレスを実現するブロックチェーンは評価されています。

中央管理から個人管理へ

現在のIT市場ではGoogleやAmazon、FacebookやAppleといった各市場を席巻する大手企業が、大きな割合を占めています。

この状況は、一部の大企業により市場がコントロールされており、世界中の人がこれらの企業に依存しているともいえます。

強力な管理者による支配は自由とはいいがたいもので、各企業の公平性を証明することも難しいです。過去にはFacebookから5000万人分の顧客情報が流出する事件も起きるなど、個人データを管理されることによるリスクもあります。

一部の企業による管理から一新し、それぞれの信頼性に左右されることなく、トラストレスに物事がおこなわれることで、真に自由な環境での活動が可能となります。トラストレスな環境での取引は、信頼ではなく暗号によって証明がされます。

 

トラストレスを実現している仕組み

ブロックチェーン

ブロックチェーンは暗号通貨を構成する重要な技術です。

トランザクションと呼ばれる取引情報をまとめてブロックにすることで、ブロックを鎖のように繋いでいきます。BTCのようなほとんどの暗号通貨は絶対的な管理者が存在せず、マイナーと呼ばれる人たちが報酬を得ることでトランザクションを承認しています。

また誰でもトランザクションを確認できるような透明性があり、多くの人の監視の下で成り立っている仕組みが、ブロックチェーンになります。

マイニング

トランザクションを承認し、ブロックチェーンに繋いでいくことをマイニングといいます。

取引がおこなわれると、マイナーが自分のマイニングマシンを使い、取引の正当性を確認します。

正しければ取引は承認されて、新しいブロックにトランザクションが書きこまれます。そして最も早く承認をおこなったマイナーにはマイニング報酬が与えられます。

マイニング報酬というマイナーにとっての行動目的があることで、大多数のマイナーが競って承認をおこない、不正が通りにくくなります。結果として中央管理者のいないブロックチェーンでも、トラストレスで安心して取引をおこなえます。

非中央集権化

トラストレスを実現するということは、つまり一部の大企業や政府などが絶対的権力を持つ中央集権から離れるということです。

BTCの基盤となるブロックチェーンのように、絶対的な第三者を介しない仕組みが認知されることで、大企業や国への盲目的信頼から目をさまし、自分たちの行動を自分たち自身で管理する大切さを認識することになります。

 

トラストレスではないブロックチェーンは存在するのか?

パブリックブロックチェーンとプライベートブロックチェーン

BTCなど多くの暗号通貨を構成するブロックチェーンは、その性質上全員でネットワークを監視し、誰でも履歴を確認することができます。誰にでも開かれているオープンな環境から「パブリックブロックチェーン」といえます。

また、ブロックチェーンが注目されてから世界中の企業でもブロックチェーンの研究がおこなわれています。各企業では、自社の利益拡大や、ビジネスに取り入れることが目的のために独自のブロックチェーンの構築を目指しています。

通常のパブリックブロックチェーンのように、誰もが内容を確認できるオープンな環境にする必要がなく、一部の認められた企業や機関のみが承認をおこなえるクローズドな環境を構築しようとしています。このようなブロックチェーンを、「プライベートブロックチェーン」といいます。

クローズドな暗号通貨

企業が開発するブロックチェーンのほかにもクローズドな暗号通貨として、主にXRPがあります。

リップル社が発行する暗号通貨で、国際送金に利用されています。リップル社によって決められた企業のみが承認をおこなうので、XRPではマイナーによる公平性の担保をする必要がありません。

リップル社の提供するサービスにXRPは利用されており、送金にかかる時間を大幅に短縮することができます。

XRPは1秒に1500件の取引を承認できるので、代表的な暗号通貨のBTCが1秒に3~6件程度の承認ができることと比較して、より多くの取引を素早くおこなえます。

アメリカからメキシコへの国際送金の実験では、従来の送金日数が2~3日であったのに対して2分で完了したそうです。また手数料も従来から40~70%の削減に成功し、現在も確実に提携企業をふやしています。

XRPなどの暗号通貨は、クローズドな環境を整えることで素早い取引の承認を実現しています。

 

まとめ

暗号通貨はブロックチェーン技術によって、仲介者の存在しないトラストレスの環境を実現しています。大企業から提供されたプラットフォームを利用することは、あなたの情報が不正利用されたり、ハッキングによって情報漏洩をするきっかけにもなります。

これからさらに発展するブロックチェーン技術の活用をすすめることで、個人情報を守りながら上手にインターネットを活用することができます。

個人間の取引を個人的に管理する大切さが、ブロックチェーン技術の広まりで再認識されることで、絶対的な第三者による行動の制限から解き放たれるきっかけにもなります。

またブロックチェーンには誰もが状況を確認できるパブリックブロックチェーンと、企業や政府が発行するようなプライベートブロックチェーンに分けられます。

今後は各国が暗号通貨を発行する流れも強まると思われるので、世界の暗号通貨の状況をチェックしてみましょう。

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