2019.03.13 [水]

フィンテックの保険分野のInsurTech(インシュアテック)とは?

InsurTech(インシュアテック)という言葉を聞いたことがありますか?

保険分野におけるFinTechと呼ばれるInsurTechは、保険分野のビジネスに革新を起こしています。

InsurTechの定義や、近年の市場状況、メリットや国内や海外のInsurTech活用例をご紹介します。

 

InsurTech(インシュアテック)とは?

InsurTech(インシュアテック)とは、情報通信技術などのテクノロジーを活用し、保険の分野で革新的なサービスを生み出すことを指しています。

Insurance(保険)×Technology(テクノロジー)を組み合わせた造語です。

テクノロジーによって革新的な金融サービスを生み出すFinTech の保険版と言われています。

InsurTech(インシュアテック)によって、保険会社は保険業務の効率化、革新的な商品を生み出すことや、コストの削減まで可能になると言われています。

契約者にとっては、保険契約が簡単になるだけではなく、場合によってはこれまでよりもぐっと保険料が安くなる場合もあるでしょう。

なぜ保険料に影響があるのかというと、InsurTechによって、これまで大枠の中で一律だった保険料が、個人の状況によって細かく設定されるようになるからです。

 

成長分野のInsurTech(インシュアテック)市場

InsurTechは日本に先駆けて、海外では導入や研究が進んでいます。2014年〜2017年のInsurTech分野への投資の成長率は、年平均36.5%というすごいデータが出ています。世界中で多くの人がInsurTechに注目していることが伺えます。

海外に遅れをとっているものの、日本国内のInsurTech市場も年々拡大しており、大手、中小かかわらず参入する保険会社が増えています。

2016年の日本国内のInsurTech市場は売り上げベースで約460億円でしたが、2020年には、1100億円規模になると予想されています。

 

保険業務のプロセスから考えるInsurTech(インシュアテック)のメリット

ここからは、生命保険分野の保険会社の業務においてInsurTechを導入することで起こるメリットをご紹介します。

保険業務を、保険商品の企画、販売、契約業務、加入期間から保険契約の履行まで、と大きく4つのプロセスに分けて、プロセスごとにInsurTech活用のメリットをご紹介します。

保険商品の企画

保険商品の企画段階では、IoTによる加入者の健康データ取得や、すでに保険会社が持ち合わせているデータの解析にInsurTechを導入し、時代にあった魅力的な商品の開発が行われています。海外ではすでに始まっていますが、日本でもここ2、3年で少しずつ進み始めました。

保険商品の企画にInsurTechを活用することで、より精密に検証が行える上に、企画のプロセス自体も効率化され、さらにはニーズや時代にあった商品開発が期待できます。

保険商品の販売

販売のフェーズでは、これまで保険会社の営業員や代理店から保険を契約することが主流でした。しかし、InsurTechの進んでいる保険会社では、インターネットから、契約者自ら自分に合う保険を選んで加入することができる仕組みとなっています。これにより、保険会社の人件費や手間、そして加入者側の手間も縮小することができます。

このような仕組み作りにも、人口知能(AI)などのテクノロジーが使われています。

保険契約業務

契約者の情報を処理する保険事務業務の場面でも、RPA(決まった作業を自動化するシステム)が導入され、効率化が進んでいます。

契約者の情報を間違えて登録してしまうことや、人為的なミスで情報を漏洩することは許されません。保険契約事務のような定型的で、なおかつ正確性とスピードが求められている仕事はテクノロジーが得意とするところです。

今後は、これまで人間の事務員が行っていたほとんどの作業を、テクノロジーが代替していくようになるでしょう。

保険加入期間〜保険契約の履行まで

これまでの保険は、加入後は定期的なレポートや更新時期のお知らせなどが送られてくる以外は、万が一のときに保険金が支払われるまでは保険会社と被保険者の間に必要以上の接点はありませんでした。

しかし、InsurTechにより、保険を売りっぱなしにするのではなく、加入者の日常に入り込み、予防医療的な観点で加入者に関わることができるようになります。

保険会社からすれば、加入者の健康増進に関わることで、万が一の保険金の支払いを減らすことにもつながりますし、保険業界全体が予防医療をテーマにしたビジネスモデルを新しく作っていく可能性が示唆されています。

 

 InsurTech(インシュアテック)の取り組み事例

ここでは、具体的にInsurTechが活用されている事例をいくつかご紹介します。InsurTechは生命保険分野に限らず、自動車保険などの損害保険の分野でもすでに活用が始まっています。

 生命保険分野ではヘルスケアに力を入れる取り組みに活用

保険会社は、ICT(情報通信の技術)を用いて、保険加入者の健康状態を把握し、その人の個別の保険料に反映をしたり、今度の保険商品の企画にもそのデータを活用します。また、健康増進アプリを提案して、保険加入者の健康増進にもますます努めていくことでしょう。

その他にも、ヘルスケアの分野のベンチャー支援を行ったり、提携してビジネスをすることで、従来の保険業務以外の、ヘルスケア部門のビジネス構築も模索しています。

国内生保大手の住友生命は2018年に「Vitality(バイタリティ)」という商品を発売しました。

このVitalityは、加入者の食生活や血糖値、健康診断などの結果をポイント化し、健康であれば保険料を割引する(数値が悪い場合には割り増し)という大きな特徴があります。健康増進に努めれば、最大で30%保険料が割安になるようです。数値データは時計型のウェアラブル端末などで取得され、住友生命に共有される仕組みが導入されています。

健康になって、なおかつ保険料も下がるのであれば、加入者にとっても良いことづくめですね。

また、東京海上グループの生保部門、東京海上日動あんしん生命では、「あるく保険」という商品が発売されました。歩いた歩数によって「健康増進還付金」を受け取ることができる面白い仕組みです。

歩数の計測は、「あるく保険」に加入した際に、専用のウェアラブル端末が貸し出され、それによって行われます。1日平均8,000歩以上歩くことで、還付金を受けとることができるようになります。

保険金の支払いも迅速になる

アフラックのがん保険では、迅速な保険金の支払いを目的に、InsurTechを活用した即時支払いサービスを導入しました。

即時支払いを可能にするために、生体認証の導入と、ネットバンキングの即時振り込みサービスを活用しています。

生体認証とは、指紋認証や顔認証のことを指し、これにより本人確認書類の提出が不要になり、保険金の請求がより早くアフラックに受領されるようになります。

また、これまでは最短で、請求が受領されてから翌日の着金だったものが、ネットバンキングを活用することにより、リアルタイムでの保険金振り込みを可能にしています。

自動車保険料とInsurTech(インシュアテック)

InsurTechは生命保険だけではなく、損害保険や自動車保険の分野にも革新を起こしたと言われています。

これまでの自動車保険では、保険に加入する際に、運転歴や免許の色、点数などを自己申告にて確認されました。それに年齢や車種などの基本情報を踏まえて大方の保険料が決まります。

しかし、最新のテクノロジーを導入している自動車保険の場合には保険料の決定方法が異なります。

海外の事例では、保険会社は希望者の車に機器を取り付け、運転時のデータを取得します。

運転時の平均速度やアクセル、ブレーキの傾向、走っている道路までデータを取り、保険会社にそのデータが共有される仕組みになっています。一定期間データが蓄積されたのち、保険加入者の運転状況によって、保険料が変わります。

安全運転の人は保険料が安くなりますし、危険運転の傾向がある人は逆に高くなったりします。

日本でも、ソニー損保の自動車保険で、「やさしい運転 キャッシュバック型」という商品が2015年より販売されています。

工事不要の専用の端末を車に設置することで、運転がスムーズかどうかを計測することができ、安全運転ドライバーと認定されれば、保険料がキャッシュバックされる仕組みとなっています。

事故にあった際に自動的に事故受付センターと連携

東京海上日動とパイオニアが共同開発した「ドライブエージェントパーソル」という、ドライブレコーダーがあります。これまでのドライブレコーダー端末に、通信やGPS機能を搭載している最新型のものです。

このドライブエージェントパーソルは、事故などにより大きな衝撃を感知すると、自動で東京海上日動の事故受付センターと連動し、事故発生の受付と、状況によって救急車を呼ぶこともできます。GPS機能により、事故車の位置の特定も瞬時に行うことができます。

 

まとめ

InsurTechの基本情報や、メリット、活用事例などをご紹介しました。

相互扶助の精神による“保険”という概念の歴史は古く、18世紀以降にはすでに、合理的に保険料を割り出した現在のような生命保険の形が存在していたと言われています。

古くからあるこの保険分野に、最新のテクノロジーを掛け合わせたInsurTechにより、保険業界は大きな変化の時期を迎えています。

保険会社の今後のビジネス展開や、InsurTech分野のベンチャー企業の成長にこれからも目が離せません。

この記事をシェア