近年は暗号通貨投資が流行る中、ICO投資が脚光を浴びました。
誰でも気軽に投資ができて、当たれば一気に何十倍にもできる投資法として認識される一方で、資金調達後に資金を持ち逃げする団体や、資金繰りが難航し計画通りに進まないプロジェクトもありました。
ハイリスクハイリターンの投資方法として有名になったICOですが、ICOで利益が上がった場合税金はかかるのでしょうか。また税金がかかるとして、どのように利益額を計算すればいいのでしょうか。
本記事ではICO投資や暗号通貨投資の税務上の取り扱いや、確定申告の方法を紹介します。
ICO投資をしたら税金はかかる?
そもそもICOとは?
ICOとはイニシャルコインオファリングの略です。日本語で新規暗号通貨発行という意味で、株式発行のIPOからきている言葉です。
ICOでは資金を集めたい企業や団体が新しくトークンを発行し、投資者にたいし、新規トークンの情報やプロジェクトの理念や予定を示したホワイトペーパーを公開します。
そのホワイトペーパーを読み、新規トークンを購入したいと思った投資者は、所有する暗号通貨を新規発行されたトークンと交換し、企業や団体は資金を集め計画通りにプロジェクトを進めます。
取引所に上場することで発行されたトークンを売買できるようになり、ICO時に払った価格よりも高い値で売却できれば利益を出せます。
ICOで資金を集めた団体が予定通りに計画を進めればいいですが、もともと計画をまじめに進める気がなかったり、資金を持ち逃げするなど、そもそもの計画を立てている場合があります。
結果として計画が進まなければ、取引所にトークンが上場しても一気に価格が暴落して、投資者は利益を出せません。そのため、ICOはハイリスクハイリターンといわれています。
ICO投資をする場合は、プロジェクトをおこなう企業や団体を精査し、また内容を吟味することで実現性があるかも確かめる必要がります。
ICOで利益が出たら税金がかかる
ICO投資で利益が出た場合は、税金がかかります。暗号通貨取引により他の暗号通貨との交換や、商品の購入、法定通貨との交換による利益の確定が発生すれば確定申告の対象になります。
ICO投資では暗号通貨と新規発行のトークンとの交換になるので、そこで1回目の利益確定ポイントが発生します。
また交換した新規トークンを取引所で売却することや、何かのサービスと交換することで結果として利益を得た場合は、2回目の利益確定ポイントになります。
例外として、ICOに参加することで継続的に利益が入る状況であるインカムゲインの時は、取得価格を0円として計算しなければなりません。
暗号通貨を保有したままの状態は確定申告の対象にならない
暗号通貨を保有すること自体には税金はかかりません。暗号通貨を保有すると、一時的に利益が出る含み益と呼ばれる状態がありますが、含み益では利益確定をしていないので、税金発生の対象外です。あくまで利益が発生したときだけに税金が発生します。
ICOでの税金の取り扱い
暗号通貨は雑所得となる
暗号通貨で利益が出た分に関しては所得税の中で「雑所得」としてあつかわれます。
ICOも暗号通貨投資の1つなので雑所得になります。会社から利益を得ている場合は、1年に20万円以上の利益が出れば確定申告の対象になります。
また学生や主婦などの、扶養家族になっている人は住民税の基礎控除を除いて、1年に33万円以上の利益が出た場合に確定申告が必要です。
雑所得は最大55%の税金がかかる
雑所得では累進課税とよばれる所得税と住民税を支払います。
住民税は一律10%ですが、所得税は累進課税なので所得が上がるごとに割合も上がっていき、4000万円をこえたら45%の支払いになります。つまり4000万円以上の所得になることで、合計55%の税金がかかります。
暗号通貨投資で儲かったからといって、好きなだけ使っていては税金を納めることができない状態にもなりかねません。
また暗号通貨市場は波が激しいので、いつ保有分の暗号通貨の価格が急落するかもわかりません。税金を支払う分の日本円を確保することをおすすめします。
FXとの違い
かつてのFXの税収も雑所得になっていました。
1998年にFXが解禁してからしばらく総合課税でしたが、2005年に金融先物取引法改正により、FX取引業者は金融庁への登録が義務付けられました。違法なFX業者を取り締まることで、同年に登場した取引所FXでは申告分離課税となりました。
また2012年には、国内すべてのFX取引が申告分離課税に1本化し、税率は20%に統一されたと同時に損失繰越も可能になりました。
損失繰越とは1年のトータルがマイナスになった場合、3年間にわたって繰り越せる制度です。
1998年にFXが解禁してから14年で、FXの税率が申告分離課税として20%になり損失繰越も可能になったことを考えると、暗号通貨の税率が同じように申告分離課税となるには、時間がかかるかもしれません。
ICOで税金がかかる場合の確定申告のやり方
損益計算
暗号通貨の収入計算は、以下が計算対象になります。ICOは暗号通貨による商品の購入に該当します。
1.暗号通貨の売買
1月1日から12月31日までの1年分の取引の合計を出して所得を計算します。
計算方法には移動平均法と総平均法の2つがあります。移動平均法は暗号通貨の購入額と残高を計算し所得を出す方法です。
総平均法は1年間の購入平均レートをもとに計算した総購入金額と、売却合計金額の差額である所得を計算する方法です。計算の際には移動平均法と総平均法のどちらかを継続して選ぶ必要があります。
2.暗号通貨による商品の購入
2017年4月の資金決済法改正によりBTCが決済手段と認定されました。
暗号通貨による商品の購入に使用した場合、暗号通貨使用により生じた利益として課税対象になります。また暗号通貨の交換でも課税対象です。
計算方法として1BTC=10万円の時に1BTCを購入し、1BTC=40万円のさいに1BTCを売却し日本円にしたとします。この場合は得た40万円からもともとの購入額10万円を引いて、30万円の収入になります。
3.マイニングによる報酬
暗号通貨にはブロックチェーン技術が基盤にあり、ブロックチェーンではマイナーと呼ばれる人たちがマイニング報酬を得て、正しい取引情報を記録しています。マイニング報酬も課税対象になります。
マイニングには専用の高性能マシンや高額な電気代が必要です。マイニングで得た収入から電気代やマシンの購入費用を引いた分がマイニングによる報酬になります。
4.暗号通貨で利益を出しても確定申告を出さない場合
暗号通貨で利益が出ている状態で確定申告をしなくても、すぐに何かおこることはありません。
しかし所轄の税務署から税務調査が入ることで、あなたの暗号通貨の利益について徹底的に調査されます。申告漏れが見つかれば以下の項目で追徴課税が発生します。
- 所得税や住民税など、申告期間内に払うはずだった税金
- 申告しなかったペナルティ
- 税金の支払いが遅れたことに対する延滞税
- 意図的に申告をしなかった場合の重加算税
あなたが本来払うはずだった額よりも多い税金を払うことになり、結果として損をします。
暗号通貨の利益を海外口座に移すなど、意図的に利益を隠す行為が発覚すれば、さらに重加算税を支払うことにもなります。
また、確定申告の時効は通常なら確定申告時期から5年後の3月15日です。
また意図的な脱税行為がある場合には、確定申告時期から7年後の3月15日になります。時効の期限はありますが、税務署は暗号通貨取引をおこなう人について、リストアップをおこなっているようなので時効で逃れることはできないでしょう。
まとめ
人によっては暗号通貨投資が初めての投資経験になることもあります。
暗号通貨の利益計算方法はとても複雑で、1つ1つ手作業をおこなうためにかなりの時間がかかります。暗号通貨の利益計算をサポートしてくれる無料のサービスもあるので、それらを駆使して確定申告に臨みましょう。
またICOについてはあなた自身で取得額や時期など、詳細を記録しておく必要があります。
ICOの部分に関してはまだサポートになるサービスは存在していません。ICOの利益も税金計算の対象なので、手間はかかりますが確実にこなしましょう。
また、想定される利益が大きい場合は税理士に任せるのも1つの手です。
暗号通貨に詳しい税理士に依頼することで、スムーズに確定申告をおこなえます。
税理士に依頼するには、詳細な取引のデータが必要になります。取引所での取引データはすぐに出せますが、個人的な取引や決済など個別に記録が必要な取引もあります。
暗号通貨取引をおこなったらデータを取る癖をつけることで、データの所在を探すのに苦労しないでしょう。