リップルで活用されている分散型台帳「XRP Ledger」

2019.05.08 [水]

リップルで活用されている分散型台帳「XRP Ledger」

XRP Ledgerとはリップル専用の分散型台帳です。法人が関わる国際送金の高速化を目的に作られ、途上国の経済的発展も助けるといわれています。

本記事ではXRP Ledgerの定義や仕組みを述べたうえで、同システムによる分散化のメカニズムや実際の活用事例に迫ります。

 

XRP Ledgerが開発された背景

XRP Ledgerとは、リップルが関わった決済や送金などの取引履歴を記録する分散型台帳です。

暗号化技術により台帳のハッキングや改ざんを未然に防ぎます。リップルも分散型台帳と呼ばれている以上、リップル社も含め関わるユーザー全員で管理と運営を行います。

ビットコインやイーサリアムなどでいうところのブロックチェーンに相当しますが、正確にはXRP Ledgerとブロックチェーンは別物です。

ブロックチェーンを伴う仮想通貨は、マイニングというデータ処理作業により、仮想通貨の存在や取引が承認されます。

しかしXRP Ledgerは、マイニングを行うマイナーではなく、あらかじめ指名を受けた代表者により承認作業が行われます。

元々はRCL (Ripple Consensus Ledger) として、リップルの決済を効率化させる働きを持っていました。しかし RCLの場合、送金額が可視化される問題からセキュリティ面の不安があったためそれを解決するためにXRP Ledgerが開発されたという背景があります。

 

XRP Ledgerの仕組み

XRP Ledgerの仕組みを4つの特徴にわけて解説します。

1.改ざんやハッキングを未然に防げる

リップルはXRP Ledgerにより、リップル社を含めたユーザー全員の意思で運営・管理が行われています。

リップルに関わるユーザーは世界中に大勢いるうえ、全員が監視の役目を与えられており、いかなる不正行為も通さない状況になっています。

リップルの取引記録はユーザー全員のサーバーに記録されるため、誰かが記録を改ざんしても、改ざん前の記録をほかの多くのユーザーが持っているためすぐにバレます。

XRP Ledgerはこうした不正行為を即座に察知できる体制を設け、健全な秩序を維持した状態でリップルを管理・運営できます。

2.決済を早く済ませられるコンセンサスアルゴリズム

XRP Ledgerはコンセンサスアルゴリズムによって作られています。ビットコインやイーサリアムなどのブロックチェーンとは異なり、リップルはヴァリデーターと呼ばれるアルゴリズムを利用しています。

ヴァリデーターは複数の健全なサーバーがリップルの取引を検証し、台帳に記録するシステムです。

ヴァリデーターによるデータ処理はほかの仮想通貨のブロックチェーンよりも素早く、送金完了は4~5秒で済むともいわれています。

※コンセンサスアルゴリズムとは、分散型台帳に記録するデータを決定するためのルールです

3.最低20XRPの保有が必要

XRP Ledgerは、管理に最低20XRPが必要とされています。リップル用の口座を維持するのに、常に口座内に20XRPはなければいけないことを意味します。

この20XRPは口座開設および維持のための手数料であり、送金などの移動は不可能です。

口座維持手数料としての20XRPは、大量の口座開設や送金などの悪意ある行動を未然に防ぐためです。

仮想通貨でもハッキングで流出させた分をほかの口座に移すことで証拠隠滅させるマネーロンダリングという行為に使われたケースがあります。口座維持のための20XRPはこうした犯罪者の脅威から口座やリップルを守るための予防手段です。

4.手数料が公平である

XRP Ledgerは手数料を発生させますが、その支払先は存在しません。不正行為者からリップルのネットワークを守るために手数料を設けています。

ビットコインやイーサリアムの場合は、マイニングを行ったマイナーに対し報酬を支払うために、取引手数料が発生する仕組みです。

しかしXRP Ledgerの取引手数料は、マイナーのような仲介者が一方的に得をしないよう破棄されるルールになっています。

 

XRP Ledgerの分散化について

従来のリップル社はヴァリデーターやUNLを自社で指名していました。

※UNLとは、「Unique Node List」の略であり、リップルの取引を承認するための信頼できるサーバーのリストを意味します

しかしリップルの知名度が仮想通貨業界で上昇した現在、トラブルによりユーザーの信頼性を損なわないためには、ヴァリデーターやUNLを特定に頼りすぎないことが重要と考えられています。

以上のことからXRP Ledgerの分散化を実行するための2つの方向性が定められました。

承認者の多様化

リップル社ではヴァリデーターおよびUNLの多様化を検討しています。

リップルの信頼性を守るには、不正取引などから仮想通貨を守るセキュリティの向上が鍵となります。

同じ承認者ばかり指名していると、その人やグループにトラブルがあったり、リップル社を裏切って不正行為を働いたときなどに対応ができないリスクがあります。

このような事態を避けるためリップル社は承認者の指名対象の拡大を続けていくスタンスを取りました。

取引承認に使われるソフトウェアや機械などのツール、人物や組織のタイプ、国籍、業種などが多様化するように指名者をアトランダムに変えていくことを意味します。

ヴァリデーターやUNLの質も重視しており、RCクラウドシステムに賛同した世界中の金融機関も加えることで、XRP Ledgerの公正さを崩さない努力も行われます。

リップルの分散型台帳の管理に参加するヴァリデーターやUNLは、身分証明、稼働時間、これまでのリップルの取引承認実績などの観点から常時チェックされます。

UNLはリップル社以外の第三者も指名

リップル社では、本社以外の第三者が指名したサーバーの持ち主もUNLに加えるスタンスを表明しています。

リップル社がヴァリデーターやUNLの指名を独自に続けていると、リップル社の指名に傾向が出ます。

この傾向につけ込み、ヴァリデーターやUNLのサーバーを乗っ取り犯行におよぶ人が現れかねません。

そこでリップル社では、自社以外に選ばれたサーバーをUNLに加えることで上記のリスクの軽減を図っています。第三者に選ばれたサーバーがUNLに2つ加わるごとに、リップル社指名のサーバーがそこから1つ取り除かれる徹底ぶりです。

以上の対策により、馴れ合いによるセキュリティレベルの低下や、リップル社の指名傾向が原因でヴァリデーターやUNLに選ばれたサーバーが犯行に利用されるのを予防します。

 

XRP Ledgerの活用事例

xRapid

xRapidはリップルを使った高速送金ソリューションシステムで、世界中の銀行や送金業者に提供されます。

xRapidは支払業者と銀行を仲介し、日本円などの法定通貨とリップルの交換を手伝います。

xRapidの助力により、提供を受けた銀行は送金スピードの高速化により活動を活発化させられます。送金の高速化により取引数が増えることは銀行の利益向上につながります。実際にxRapidを採用する銀行や企業は世界中で増えており、将来的には金融業界においてリップルは欠かせない存在となるでしょう。

Ripple Net

Ripple Netは、リップル社が開発した決済ネットワークで、「xRapid」に加え、銀行金融商品向けに国際送金を高速化できる「xCurrent」、一般企業向けのリップル送金用ソリューション「xVia」の3つのシステムで構成されています。

Ripple Netでは共通ルールに基づいて決済が行われるため、滞りなくリップルの決済の高速性を発揮させられます。このことから世界中の金融機関や企業、団体が心置きなくRipple Netに参加しては、送金にリップルを利用しています。

日本でもSBIホールディングス主導のプロジェクト「内外為替一元化コンソーシアム」により、リップルを使った低コストによる高速送金を実用化する活動を展開しており、同プロジェクトからスマートフォンの送金アプリ「Money Tap」が提供されています。

 

まとめ

リップルはXRP Ledgerという独自の分散型台帳を使用しています。関係するユーザー全員で管理・運営をするため改ざんやハッキングなどの被害を予防しやすく、独自のコンセンサスアルゴリズムで送金の高速化ができます。ただし、リップル用口座には最低20XRPは常に入れておく必要があります。

犯罪被害を防ぐため、リップル社も取引を承認するヴァリデーターや承認役のサーバーを多様化させたり、第三者による指名の機会を与えるなど公正な取引と健全な運営の維持に努めています。

この記事をシェア