新たな資金調達方法となる STO を解説! 今更聞けない基礎知識編

2020.03.20 [金]

新たな資金調達方法となる STO を解説! 今更聞けない基礎知識編

新たな資金調達方法として注目されるのが「STO」です。

株ではIPO、暗号資産ではICOという方法が知られていますが、STO(セキュリティ・トークンオファリング)は、これらとどのような違い・特徴があるのでしょうか。

STO=有価証券をトークン化したもの

STOとはSecurity Token Offering(セキュリティ・トークン・オファリング)の略。

セキュリティトークンとは有価証券などの資産をトークン化したものであり、オファリングとは募集という意味です。つまり、セキュリティトークンを使って企業が資金調達を行うことをSTOといいます。

セキュリティと聞くと安全性をイメージするかもしれませんが、これは株券や債権といった有価証券のことを指しており、これらをトークン化したものをセキュリティトークンといいます。

セキュリティトークンとユーティリティトークンの違い

セキュリティトークンとは、ビットコインをはじめとする暗号資産とは違うものです。ビットコインはユーティリティトークンであり、有価証券をトークン化したものとは違う性質を持っています。

まず、セキュリティトークンについて。

セキュリティトークンは前述のとおり、有価証券をトークン化したもの。つまり、本来は有価証券と同じ扱いであり、法による規制も暗号資産に比べるとより厳しくなります。

続いてはユーティリティトークンについて。

ユーティリティトークンは暗号資産取引所で一般的に売買されるトークンであり、ブロックチェーン上で展開されるプロジェクト内において利用されるトークンでもあります。たとえば、イーサリアム。イーサリアムには、契約を自動で行うことができるスマートコントラクトという機能がありますが、これを利用するための手数料(燃料)としてETH(イーサ)が使われます。このように、トークンを使ってそのサービスを利用することができるため、「実用性」という意味からユーティリティトークンと呼ばれています。

また、BTC(ビットコイン)やLTC(ライトコイン)といった暗号資産も、ユーティリティトークンのひとつです。

セキュリティトークンを利用するメリットとは

ユーティリティトークンとして暗号資産が存在しており、さらに有価証券は証券取引所にて取引が活発に行われています。なぜ有価証券をセキュリティトークンとして活用するのでしょうか。

セキュリティトークンはもともと金融商品として各国で規制が行われており、法体制が整っていると言えます。つまり、ユーティリティトークンに比べると売買に関するトラブルが起こりにくく、投資リスクが低いというメリットがあります。

このため、機関投資家が売買に参入しやすくなること、暗号資産の資金調達方法であるICOに比べると格段に安心感が増すことなど、投資家保護につながるトークンとも言えるでしょう。

さらに、セキュリティトークンは証券取引所で売買される有価証券に比べて取引の場が広がり、流動性が高まる期待も。

取引できる時間が決まっている有価証券に比べ、セキュリティトークンは一般的な暗号資産(ユーティリティトークン)同様、いつでも売買できるという魅力があります。

 

ICO(イニシャルコインオファリング)との違い

暗号資産を用いた資金調達方法として、ICO(イニシャル・コイン・オファリング)があります。

ICOは、ユーティリティトークンを発行して投資家からプロジェクト開発のための資金を集める方法を指します。中には資金を集めた後に行方知らずというICOがあったり、開発が思うように進まなかったりというものも。

そのため、ICOに参加するリスクについて日本でも議論が行われており、ICO自体を禁止する国や地域も存在しています。

STOとICOの違いは、まずトークン発行元の透明性が高くなること、厳しい規制が適用されることなど、ICOに比べるとSTOは参加リスクが低いことが挙げられます。

その一方、STOは厳しい規制ゆえに参加への間口が狭く、一般投資家がトークンを購入できないというデメリットも存在しています。

 

STOに関するプロジェクトも登場

セキュリティトークンを扱うためのプラットフォームのひとつに「Polymath(ポリマス)」があります。

Polymathは、STOに参加したい投資家とトークンを発行したい企業や団体との橋渡しをするためのプラットフォームで、安全性確保のために厳しいKYC(本人確認)を行います。

KYCの後、STOに参加するため投資家のイーサリアムアドレスがリンクされるという仕組み。トークンの発行についても法の専門家によって認可されるまで売買はできず、その発行や認可への申請にかかる手数料は、PolymathのPOLY(ユーティリティトークン)で支払われます。

このように、STOはICOに続く安全性の高い資金調達プラットフォームとして知られており、日本でも2019年10月に「日本STO協会」が設立されていることからも、今後の法整備に伴って注目されることが予想できます。

 

さいごに

STO(セキュリティ・トークン・オファリング)は、ICOへのリスクを懸念する投資家保護ができるだけでなく、透明性の高いブロックチェーンとの掛け合わせでより安全にトークンの発行・売買が可能になる仕組みです。

規制面など課題は多く残されていますが、日本でもSTO周知に向けた動きが高まっていることからも、今後注目されることは必至と言えるでしょう。

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