2020.06.23 [火]

ソニーが世界を変える!ブロックチェーン技術を用いた音楽の権利管理実証

 

メタディスクリプション>ソニーがブロックチェーン技術を用いて、音楽業界にイノベーションを起こそうとしています。「soundmain(サウンドメイン)」と呼ばれるサービスは、ブロックチェーン技術で音楽の著作権を管理し、コンテンツ作成者の創作活動を活性化させます。

ソニーが注目するブロックチェーン技術とは

ソニーが注目しているブロックチェーンは、暗号資産ビットコインの中核技術から生まれ有名になった、分散型台帳技術によるネットワークのことです。取引データの入った「ブロック」を「チェーン」のように連結していくことで情報を保管できます。ブロックにデータが1度記録されると、改ざんは非常に難しいものとなります。

ではなぜソニーが、ブロックチェーンに注目するのでしょうか?それは、個々のブロックがP2Pネットワークで管理されることにより、データを統括して管理する人間を必要としなくなるからです。従来の中央集権型のデータ管理から、分散型台帳による自律的なデータ管理に移行させることになるので、「音楽」というコンテンツの扱いを根本から変えられるのです。

 

ソニーのブロックチェーンを用いた音楽権利管理実行

2019年4月、株式会社ソニー・ミュージックエンターテイメントは、音楽制作の場にブロックチェーン技術を用いた今までにないプラットフォーム「soundmain(サウンドメイン)」をオープンしました。soundmainは今も開発中のティザーサイトであり、世界初のブロックチェーンを活用した音楽権利管理実証となります。

今日での音楽発信プラットフォームは多数あり、世界中の誰もが作曲したコンテンツを発信することが可能になりました。しかしそれらコンテンツの権利情報は、今までどおりの業界団体・著作権管理団体によって管理されており、権利情報を証明してもらうことでコンテンツ作成者に利益が生まれる仕組みとなっています。

ソニーが開発中のsoundmainは、ブロックチェーン台帳にデータ作成日時等のコンテンツ作成者情報を記録することで、改ざん困難な状態で著作権情報を登録できます。これにより、音楽の権利情報を統括して管理するものを必要とせず、コンテンツ自体とその作成者を、複数のクリエイター間で同意し共有できるようになります。また、記録はブロックチェーン上で自動的に実現されるので、従来のように業界団体を介しての証明が必要なくなり、著作権情報登録の業務が効率化される仕組みなのです。

コンテンツ作成者側にとっての利点

では、コンテンツ作成者側にとっての利点はどういったものなのでしょうか。ソニーは、公式プレスリリースにて以下のような発表をしています。

今回開発したシステムは、著作物に関わる権利情報処理に特化し、電子データの作成日時を証明する機能と、ブロックチェーンの特徴である改ざんが困難な形で事実情報を登録する機能、過去に登録済みの著作物を判別する機能を有し、電子データの生成日時と生成者を参加者間で共有・証明することが可能となります。電子データの生成と同時に本システムを呼び出すことにより、従来証明や登録が困難であった著作物に関わる権利発生の証明を自動的に実現することも可能です。

“引用元:https://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/Press/201810/18-1015/

以上のことから、コンテンツ作成者側にとっては以下のような利点があります。

  • 改ざんが困難なので、作成者の著作権情報を明確なものとすることができる。
  • 著作権侵害といったトラブルを防げる。
  • 著作権登録に要する書類作成などの事務作業が簡略化される。

面倒なトラブルや事務作業をなくすことによって、よりコンテンツ作成に力を注げるようになるんですね。

 

ブロックチェーン技術を展開するソニーのねらい

ブロックチェーンを活用した「soundmain」を展開するソニーのねらいは何なのでしょうか。ソニーミュージック・アクシスの佐藤亘宏氏は、2019年6月に行われた会見で、2つの理由を示しました。

「(フリーランスに近いアーティストの方が、権利処理の書類業務に忙殺されることのないように)今風の音楽制作をいろいろな形でお手伝いできれば」(佐藤氏)

“引用元:https://news.line.me/issue/oa-businessinsider/243f6c217996

1つめは、新しい効率化されたプラットフォームを一般化させることで、音楽業界を活性化させようというねらいです。今はさまざまな音楽発信プラットフォームが台頭したことにより、フリーランスのアーティストが増加しています。そういった個の時代に、アーティストの権利情報処理といった事務作業を効率化させることで、さらなるコンテンツの増加を期待しています。

「(音楽マーケットは)ステークホルダーが多いエリア。我々だけで“できます”という話ではなく、広く業界団体さんと連携をとりながら、最終的にはそういうふう(ブロックチェーンで権利管理をする状況)にもっていきたい」(佐藤氏)

“引用元:https://news.line.me/issue/oa-businessinsider/243f6c217996

2つめは、ソニーの音楽業界の「立ち位置」による理由が大きいです。音楽業界はステークホルダーが多く、それぞれの団体と広く連携をとりながら事業を進めていく必要があります。ブロックチェーン技術を用いないプラットフォームはどうしても中央集権的になってしまうので、管理者であるソニーが利権を独占している構造に見えかねず、他業者からの同意が得られないのです。

ブロックチェーン技術という話題性だけではなく、音楽業界を引っ張っていこうという意気込みが感じられます。また他業者に配慮した立ち振る舞いも、ソニーが長く生き残ってきた理由のひとつなのでしょう。

 

ソニーの音楽以外でのブロックチェーン活用事例は

ソニーは、音楽以外にも映画やゲーム、金融といった多くのコンテンツ事業を行っており、ブロックチェーンを用いた技術開発によりそれらの事業のアップデートを目指しています。今回はその一例をご紹介しましょう。

株式会社ソニー・グローバルエデュケーションは、ブロックチェーン技術を用いた新たな教育のプラットフォームを作り出そうとしています。「EDN」と呼ばれる教育データネットワークは、学校や塾に管理されていた一人ひとりの成績データを、ブロックチェーンにより個人に紐づけられるのです。EDNにより学校や塾の画一的な教育はなくなり、個人の個性を伸ばせるような改善プログラムを組むことができます。学習データは蓄積されていき、就職活動時の企業とのマッチングや、過去の活動による成果をコンテンツとして発信できる方向まで視野に入れた開発です。

常に時代をけん引してきたソニーが、教育領域でも力を入れてきたのは、科学技術を普及させることによる社会貢献という起業精神によるものです。ソニーの挑戦により、教育の未来は明るいものとなっていくでしょう。

 

ソニーはブロックチェーンで音楽業界を変える

ソニーのブロックチェーンによる音楽の著作権管理は、世界初の試みです。成功すれば、音楽業界を変革することに繋がりそうです。中央集権型の著作権管理からの脱却は、コンテンツ作成者となり得る人々にも影響を及ぼします。今後もソニーの動向に注目していきましょう。

 

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