2019.11.14 [木]

ブロックチェーンをビジネスに活用するためのフレームワーク

ブロックチェーンをビジネスに活用しようとする時、ビジネスパーソンであるあなたはどこから手を付けますか。最終的に企画書を仕上げて経営会議で決裁を取らなければならない時のことを考えてみましょう。新規サービスの企画をするのであれば、ビジネスモデルを図解した絵を書き、自社にとってどのようなメリット/デメリットがあるかを整理し、投資額に対していくら儲かるかを説明しなければなりません。

ブロックチェーンを活用したい場合はどうでしょうか。なぜブロックチェーンを使うのか。ブロックチェーンを使う有用性などは文字で説明できますが、どのようなビジネス要件を実現したいか、システムとしてのブロックチェーンにはどのような要件があるかを整理しなければなりません。

ブロックチェーンの初心者がこれらを考えるときに利用できるフレームワークを用意したので活用してください。本稿ではそれの使い方について詳しく解説します。

ビジネス要件は「通貨」「真正性」「スマートコントラクト」の3つに分けて考えよう

まずはビジネス要件をまとめるところから。フレームワークでは下側にある4つの項目の穴埋めです。それぞれ詳しく見ていきましょう。

  • 通貨(価値)の機能:「何を通貨としてみなすか」

ビジネスをブロックチェーン上で実装する時はどのようなデータが価値となるかを考えましょう。例えば、ゲームであればゲーム内で使える通貨が該当しますし、もしウェブ記事の著作権をブロックチェーンで流通させようとすれば、記事が二次流通されたときに発生する著作者への報酬が該当します。この報酬はウォレットとして管理・保存するデータにもなります。

通貨=円やドルなどのお金というイメージがつきまとってしまいますが、何に価値を持たせるかの観点で整理しないとそもそもブロックチェーンで実装する意味がありません。

「データが動いたときに所有者が貰える報酬は何か?」で考えると見つけやすいかもしれません。 

  • 真正性の証明:1)価値以外で記録する情報,2)真正性を証明するものは何か

ブロックチェーンに記録するデータを決めます。①で決めた通貨(価値)の情報は記録する前提として、それ以外にどのような情報を記録したかを整理します。意図的に価値以外で記録する情報と、真正性を証明するものを分けました。最低限どの情報を記録しておけば、通貨(価値)の機能が実現できるか。また実現したいかがわかるようにするためです。

①でも説明したウェブ記事の例でいえば、記事のジャンルや記事のテキスト情報、図版情報などは「価値以外で記録する情報」です。記事の著作者の名前や記事が引用された回数など価値に直結する情報が該当します。

特にブロックチェーンの有用性として「真正性の証明」があります。①の通貨(価値)の機能の想像がどうしてもわかない人は、ビジネスで使いたい場合には何のデータの真正性を証明したいかをまとめてみると良いでしょう。

  • スマートコントラクト

報酬の支払いなどの契約の履行を自動で行ないたいときに使うのが「スマートコントラクト」です。あらかじめ契約の定義を入力しておき、その定義がシステム的にヒットしたらどのような動作を行なうかを整理します。

同じくウェブ記事の例でいえば、例えば著者が記事を100本ブロックチェーンに記録したら現時点で支払える報酬を著作者のウォレットに送金する。記事を引用する人が著作権料を10万円以上支払ったらウォレットに送金する。といった例が挙げられます。

スマートコントラクトはどこまでをブロックチェーン上で実現し、どこまでをブロックチェーン外のシステムで実現するかを考えなければなりませんが、ビジネスの企画を立てる上では、どんな動作を自動化したいかの視点でまとめると良いでしょう。


ブロックチェーンのシステム的機能の要件は3つでまとめる

 続いてブロックチェーンが持つシステム的な機能でのまとめです。ブロックチェーンはブロックチェーンレイヤー、プロトコルレイヤー、トークンレイヤー、アプリケーションレイヤーの4つのレイヤーに分かれます。

ブロックチェーンレイヤーが一番下にありアプリケーションレイヤーは一番上にあります。

ビジネスの企画を行なっている時点では詳しくまとめる必要はありませんが、ブロックチェーンの実装のプロや担当者と会話するときに最低限の情報を伝えられるようにしておく必要があります。もしシステム的機能のイメージが湧かない場合は、実装担当者と会話するなかで何を使うかを自分でまとめて矛盾が起きないようにします。

そのためフレームワークでは最低限以下の情報をまとめておきましょう。またプロトコルレイヤーとトークンレイヤーとは一つにまとめて整理します。

・ブロックチェーンレイヤー:ベースとして使うブロックチェーンは何かを記述します。もしここでビットコインのブロックチェーンの利用と記載した場合にはスマートコントラクトは利用できないので、矛盾しないように注意します。

・プロトコル/トークンレイヤー:ブロックチェーンのデータの承認の合意形成の方法や、データの合意形成に向けた計算を行なうマイナーに支払うインセンティブの設計を行ないます。合意形成の方法はPoSやPoWといった方式があります。これも利用するブロックチェーンに依存します。

インセンティブ設計は大きく、取引手数料とマイニング報酬の2種類に分かれます。

・アプリケーションレイヤー:ブロックチェーンを第三者に開放するパブリックなものにするのか。自社内のみで使うプライベートにするのかは最低限決めます。加えて開発に使用する言語などブロックチェーンアプリケーションの全体を俯瞰したときに必要なシステムの情報をまとめます。スマートコントラクトのパートでまとめる「契約やシステム処理の自動化」のために必要なシステム機能という観点で整理しましょう。

まとめ

ここで紹介したフレームワークはあくまでブロックチェーンビジネスの企画初心者向けのものです。システムに精通している方であればブロックチェーンが持つ機能からアプロ―チして整理したほうが効率的ですし、すでにビジネスを実装した経験のある人は、企画時に使ったフレームワークのほうが有効かもしれません。いずれにせよブロックチェーンのビジネス企画を体系的に整理するために活用してみてください。

文/久我吉史

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