2019.11.11 [月]

増え続ける暗号資産関連のトラブル 消費者が知っておくべき現状と対策

暗号資産への興味関心を持つ人が増えるにつれ、消費者トラブルも増えてきています。
6月18日に消費者庁が発表した消費者白書(https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_research/white_paper/pdf/2019_whitepaper_all.pdf)では、2018年の暗号資産関連のトラブル相談は3,657件と前年比約1.7倍に増加しています。2017年では前年比3.5倍と相談件数が急増していたので増加率自体は小さくなっているものの、暗号資産への興味関心を持つ人が増え、それに伴ってトラブルも増えてきているのが現状です。
そんな消費者トラブルを取り巻く環境を消費者白書から読み解いていきましょう。


暗号資産に関する相談件数の推移。2016年以降、相談件数が急増していることがわかりる。65歳以上の人の相談件数も約24%あり、インターネットへの親和性が低いイメージのある65歳以上の人もトラブルに巻き込まれている。

消費生活相談の全件数は11年ぶりに100万件を突破

そもそも2018年に国民生活センターに寄せられた相談件数は約101.8万件。2007年以降11年ぶりに100万件を超える相談件数となりました。

うち4分の1が振り込め詐欺関連のものです。地域組織や金融機関が一丸となって対策を行なったこともあり、2016年までは比率が10%未満でした。2004年頃に流行ったハガキを送ることによる架空請求が、2017年以降再び増えたことにより相談が増えているのではないかと、消費者白書は述べています。

また架空請求の手口として仮想通貨の購入代金の送金も含まれています。比率までは分かっていませんが、「儲かりそう」という射幸心を煽りながら請求ができるので、詐欺を行なう人からすれば、使いやすいツールなのでしょう。


消費生活相談件数の推移。2004年に件数が急増した以降減少傾向が続いたが、2012年以降90万件以上の相談が続き2018年は101.8万件。架空請求に関する相談が増え始めている。

家計の金融資産は増加傾向、株式・投資信託投資の増加率が高い

家計の投資状況に目を向けてみましょう。2017年末時点の家計の金融資産額は約1,800兆円。うち現金・預金が約50%を占めています。日本人が投資をあまりしないと言われている所以ですね。とはいえ、2008年から徐々に株式・投資信託の比率が大きくなってきています。投資をする人が増えたというよりは株価の上昇の影響の方が大きいようです。

その一方、銀行に預金していてもほとんど利息が付かない状況が長期化しており、消費者白書では「外国為替証拠金取引や先物取引等、リスクが高い取引への関心も高まってきていると考えられます」と述べています。

正しい知識やリスク認識を持たないまま高い利回りを求める投資家へ、暗号資産投資の話を持ち掛け、そのままトラブルにつながる。そんな事情が読み取れます。


家計の金融資産額と資産別内訳の推移では、2008年に発生した「リーマン・ショック」による株価の急落で「株式・投資信託」の資産割合が少なくなった。また、2012年以降の金融政策により株価が上昇し「株式・投資信託」の割合が増えている。「投資から資産形成へ」という政策の効果が出ているように見えますが、現金資産も増加し続けているので、あまりうまく行っていないかもしれません。


消費者庁が実施した「物価モニター調査」では、今後特に支出を増やしたい費目に、貯蓄や教育娯楽サービス費、投資に対する支出が上位に挙がっています。物質的・精神的な豊かさを求めている傾向にあり、それらに対する詐欺や犯罪集団が狙いを定めてトラブルにつながる事例が増える可能性があることを示唆している。

消費者意識調査では約4人に1人が仮想通貨への消費者政策が重要と回答


政府が対応を行なうべき消費者政策のうち国民が重要と考えている項目では、「仮想通貨」24.7%。「高齢化や単身世帯化」の73.0%や「個人データの取り扱いの適正化」の60.4%に比べれば重要と考えている国民の比率は低いです。

一方で、消費者トラブルの総数約101.8万件に対して仮想通貨の相談数3,657件は約0.3%です。そのため相談数の割に一般の人が注目している割合が多いことがわかります。割合的には個人間売買や人工知能といった、インターネットビジネスやそれに類するものに対するビジネスカテゴリーと同程度の重要度・注目度であるといえます。

暗号資産の取引案内が届いたら金融庁登録業者か確認すること

もしネット上の広告バナーでもメールでもハガキでも投資セミナーでも暗号資産の取引案内を見かけたら、その業者名を確認して金融庁の登録業者かどうか確認してください。業者名が同じだったとしても住所が異なっている場合は別業者なので、取引してはいけません。

金融庁が公開している「仮想通貨交換業者登録一覧」から一部抜粋。
引用元:https://www.fsa.go.jp/menkyo/menkyoj/kasoutuka.pdf
仮想通貨交換業者以外の登録業者一覧は、免許・許可・登録等を受けている業者一覧(https://www.fsa.go.jp/menkyo/menkyo.html)から確認できます。

万が一業者名や住所が同じでも、すぐにお金を振り込めば暗号資産が手に入る。といううたい文句であればあやしいです。取引を新規で行なう場合には、必ず本人確認が義務付けられているからです。さらに登録業者が取引の勧誘を行なう場合には「必ず儲かります」とか「今買わないと損です」といった断定的な表現や射幸心をあおる表現をしてはいけないことになっています。

これは暗号資産取引業者に限らず銀行や証券会社などの金融機関でも同じです。暗号資産も他の金融商品と同じ扱いであることを忘れないようにしましょう。

そうはいってもこのメディアを読んでいる人は詐欺に引っかかる可能性は限りなくゼロのはずです。そのため皆さんには、親や家族、子どもが引っかからないように伝えてあげてください

まとめ

ここで紹介した項目以外にも消費者白書では、様々な事例、統計データをまとめています。キャッシュレス決済の利用状況などの金融サービスの動向。消費者事故の発生状況など様々な事例を確認することができます。ぜひチェックしてみてください。

文/久我吉史

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