現在、世界中で人工知能(AI)という技術が発達しています。
AIとは「人工的に作られた人間と同じように判断する知能」のことですが、その技術が発達することによって私たちの生活が一変することが予想されます。今回は、そのAIの種類や、その仕組みについて書いていきます。
汎用人工知能と特化型人工知能とは
人工知能(AI)は2つに分類することができます。
「特化型人工知能」と「汎用型人工知能」です。特化型人工知能は、その名の通り、何かに特化した人工知能です。
計算をする、将棋をするといった特定の条件の中でパフォーマンスを発揮します。現在存在する人工知能のすべてが、特化型人工知能です。汎用型人工知能は、汎用という名の通り、どんな条件であっても、人間と同等かそれ以上の能力を発揮することができる人工知能です。
本来、人類が目指していたのは、汎用型人工知能です。例えば、手塚治虫が生み出したキャラクターの鉄腕アトムのように、人間と同じように考え、振舞うことができる、そんな人工知能を実現したいとして始まったのが1960年代です。
その後人工知能のブームは何回か訪れます。
ブームが終わって、また新しい技術が開発されることによってまたブームが起きるということを繰り返してきました。
しかし、現在の技術でも汎用型人工知能を実現することは難しいとされています。実現の見通しも立っていません。
もし実現させるとしたら、次のブームが起きるような、現在存在する壁を一つ壊すような技術革新がなければ、汎用型人工知能が実現はできないとされています。しかし、特化型人工知能は技術の発達が著しく、今、この世界はAIブームと言ってもいいでしょう。
特化型人工知能が利用されている例として、自動運転自動車があります。
車の運転という分野に特化したAIが自動で運転し、目的地まで運んでくれるようになります。それによって、例えば外へ出ることができないお年寄りも、外へ出る機会が得られるかもしれません。
他に活用されている例としては、料理のレシピを提案してくれるAIもあります。
素材名を入力すると、自動的にレシピを提案してくれます。特化型人工知能はその活用の幅が広く、次々と新しい分野でのAIが開発されています。汎用型人工知能が無くとも、特化型人工知能がもたらす恩恵は大きいでしょう。
機械学習のプロセスと必要なデータについて
機械学習とは、「機械が学習し、判断できるようにすること」です。
機械が学習をするために、データが必要となります。データを取り込むことによって、その機械がデータから、これはこのケースに該当する、と判断を下せるようになります。
機械学習を使う上でデータは、なくてはならないものなのです。そして、そのデータの取り込み方から機械学習を分類することができます。「教師あり学習」「教師なし学習」「強化学習」の3つです。
「教師あり学習」とは、機械に学習させるデータに正解ラベルをつけて学習させる方法です。
例えば、犬の写真に「犬」、猫の写真に「猫」とラベルづけをして機械に学習させます。
次に犬か猫の写真を読み込ませた時に、機械はその写真の対象物が犬なのか猫なのか判断できるようになる、というような感じです。正解をあらかじめ教えられているから、教師あり、という名前がついているわけですね。
しかし、教えられたこと以上のことは判断できないという問題点があります。犬か猫かの写真しか読み込ませていないのに、鳥の写真を見せても判断できませんよね。
「教師なし学習」は「教師あり学習」とは異なり、学習させるデータに正解ラベルをつけないで学習させる方法です。
読み込んだデータから、構造や関連性というのを勝手に学習してくれます。この関連性を見つけ出させるには、大量のデータを機械へと読み込ませる必要があります。
近年、コンピュータの演算処理のスピードが大幅に向上し、さらに「ディープラーニング」という手法が編み出されたことによって、この「教師なし学習」を実現できるようになりました。
しかしただデータの構造や関連性を見つけ出すだけなので、そのデータをどう活用するか決めるのは人間になります。
最後に「強化学習」です。強化学習では、「価値を最大化するような行動を取れるようになる」ことが目的とされています。
これはどういうことかというと、「教師なし学習」では、データを読み込み、関連性を出すことだけで終わります。
しかし「強化学習」では、その分けたデータから最適解を提案してくれます。株取引を例に挙げると、データを読み込んで学習し、最適な場面での株の売り・買いを指示してくれるようになります。正解を出すという意味では「教師あり学習」と同じですが、ラベルをつけないで学習させることから「教師なし学習」の部分も含んでいます。
モデル構築と学習
コンピュータの演算能力の向上とディープラーニングが開発されたことによって、モデル構築することが可能となりました。
モデルとは「判断したいデータを入力した時、機械が学習したデータから最適解を出してくれるロジック」のことです。
株式の売買についてのモデルなら株式モデル、YouTubeのあなたへのおすすめを判断してくれるモデルならレコメンドモデルというように、各分野の最適解をちゃんと出してくれるように完成されたAIのことです。
AIを作り出す順番は、構築したいモデルを設定、それに関するデータを用意し学習させる、モデルを構築となっています。
構築したいモデルを設定する場合、そのモデルに関するデータを用意する必要があります。
例えば、どんな営業が成功するかどうかのモデルを構築したいとき、営業に関するデータを用意します。営業が成功した時、失敗した時に、対象の年齢層、状況、会社状況、訪問回数などの詳細な状況を書いてある必要があります。
用意したデータをコンピュータに読み込ませることで学習させます。
ディープラーニングによって学習するスピードが速くなったとはいえ、元となるデータがなければモデルを構築することができません。
そのためデータを持っていなければデータを集めることも一苦労ですし、モデル構築までに数ヶ月〜数年かかります。
YouTubeのレコメンド機能がモデルとして機能しているのは、YouTubeがプラットホームとして情報を集めやすいからです。多くの検索情報や動画を見た履歴が残っているため判断することができます。ここから、データを持っている企業が強いことがわかります。
組込み向けディープラーニングの導入
ディープラーニングを行う際必要となるのは、判断をするためのデータ。
そしてもう一つがそのデータを処理するハードウェアです。この2つを準備する必要があるのですが、ここで役立つのが「組込み向けディープラーニング」です。「組込み向けディープラーニング」とは、すぐ始められるように買って構築するだけで使える、ハードウェアのセットのことです。
ディープラーニングを導入したいと思っても、何も知らない素人がハードウェアを導入することには、知識は足りませんし、コストも大幅にかかってしまいます。
しかしディープラーニングで分析したいことや、アイデアがある場合、そこで諦めたくはないですよね。その時はこの組込み向けディープラーニングを使うことによって、その手順を簡略化できます。
ハードウェアが組込み向けディープラーニングとなるため、ハードウェアは準備できました。
次に必要となるのはデータだけです。データさえ準備できれば誰でも簡単にディープラーニングを使ったAIを導入できます。
こうして誰でも簡単にディープラーニングを使えるようなることによって、現在研究者がいちいち開発していたディープラーニングを用いたAI開発が、誰でも簡単に始められるようになります。
例えば、休日の子供達の行動や、お父さんが飲みに行く頻度の分析など、日常生活でもAIが活躍するようになるでしょう。
AIと言うものが想像でしかなかった世界から、これからは私たちの周りの生活にどんどん組み込まれていくようになると思います。
まとめ
本来AIの開発は、汎用型人工知能を開発することを目的として始まりました。
しかし現在使われている人工知能は、特化人工知能です。しかしその能力は素晴らしく、様々なケースで人工知能を活用することができます。
人間ではできないようなスピードで分析し、関連性を見つけ出し、最適解を提案してきます。その人工知能は、頭のいい技術者だけが作成することができるのではなく、組込み向けディープラーニングを使うことによって、一般の人でも比較的簡単に、人工知能を作り出し活用できるようになりました。
今の世界は人工知能によって大きく変化している途中です。これらの情報に慌てず、受け止め、どうやって人工知能を活用していくことができるのかを考えていくべきでしょう。