食品がどこで収穫されて、どのように加工されているのか気になる人もいるでしょう。スーパーで食品をみても、流通に関する情報は記載されていません。IBM Food Trustは消費者の疑問に対し、答えを出すための取り組みをしています。
この記事では、IBM Food Trustについて紹介します。
目次
IBM Food Trustにブロックチェーンが導入された背景とは?
IBM Food Trustがブロックチェーンを導入したのは、生産から販売までの流れに透明性をもたせるためです。そもそも、食品が消費者の手に渡るまでの流れには多くの段階があり、どのように管理されているのかが不透明なものでした。生産や加工などに関する情報は紙面で残されていても、それを他の場所から確認するのは難しいものです。ブロックチェーンを利用することで、時間もコストも大幅に削減して情報管理をすることが可能になります。また、国連によると全体の3分の1の食品は、消費者の手に届く前に腐って破棄される現状がありました。
破棄される食品が大量にあることで、コスト面でも大幅にロスがあり問題解決が急がれていました。誤って腐敗した食品が消費者の手元に届くことで、食中毒により人の命も失いかねません。サプライチェーンの透明化と食品の安全性の向上のため、ブロックチェーン技術は活かされています。
食の安全性を約束するIBM Food Trustの特徴
食品のサプライチェーンと呼ばれる供給連鎖の過程を明らかにするため、IBMは2018年10月17日にFood Trustを導入しました。Food Trustは文字の通り、食の信頼性を高めるためのブロックチェーンが活用された食品追跡システムです。Food Trustのテスト期間に18カ月ほどの時間を要し、システムに実用性があるか実証実験が行われました。Food Trustでは、食品の収穫や加工などの流通過程が詳細にブロックチェーンに記録されます。これにより、食品のサプライチェーンが透明化され、消費者に安心感を与えることが可能になります。IBMではFood Trustによって食品の安全性を担保することで、独自のブランドを押し上げてきました。2020年には、“消費者が食品に関する情報を手軽に入手できるスマホアプリもリリースされる”(ことが、米ラスベガスで開催されたコンシューマー・エレクトロニクス・ショー(CES)で発表されました。
ブロックチェーンがシステムに選ばれた理由
IBMにおけるブロックチェーン技術は、独自に開発されたプライベートチェーンが用いられています。ブロックチェーンの特徴として、第三者によって改ざんされにくい点が挙げられます。情報が改ざんされにくいため、信頼性が高い記録を永続的に残せることを意味します。オープンソースを運営する「The Linux Foundation」がHyperLedger Fabricと呼ばれるプロジェクトで、ブロックチェーンを開発していることが特徴です。プライベートチェーンは管理者が許可することによって情報を見ることができ、情報の機密を徹底できるというメリットもあります。紙面のようなオフライン保管ではないため、メールや電話などで確認する必要もありません。ブロックチェーンを利用することで、低コストで情報を管理することが可能です。具体的な例として、“コーヒー豆においては生産者から消費者の手に渡るまで、協同組合など7つの場所を経由します。”以前は、その全ての流れを明確に記録するのではなく、一部分のみを記録していたため信頼度の低い情報となっていました。これを改善するために、全ての流通経路が一目瞭然になるブロックチェーン技術が導入される流れとなりました。
世界最小のクリプトアンカーの強みとは?
食品とトレーサビリティをより確かに紐づけるために、米国で開催された「IBM THINK 2018」で3月19日に“IBMリサーチのアーヴィン・クリシュナ院長によって発表”されたのがクリプトアンカーです。クリプトアンカーは世界最小のコンピュータでありながら、製造コストは11円ほどです。食品の追跡は、クリプトアンカーの1平方mmほどの極小サイズによって実現されています。確実に食品を追跡することで、食品の偽造品の流通を防ぐことにも効果を発揮します。クリプトアンカーは極小のサイズでありながら、太陽電池によってデータの観測の分析、伝送などを行うことが可能です。ネットワークとの通信は、LEDの発光によって行われます。また、クリプトアンカーの有用性が実証されれば、食品だけではなく医療など幅広い場面で活用されることが期待されています。ブロックチェーンとクリプトアンカーの技術が融合することで、食品が本物であるかを見極めることも可能です。
世界の企業に影響を与えるIBM Food Trust
IBM Food Trustが導入したブロックチェーン技術は、国内外の企業から大きな注目を集めました。フランス企業のカルフールや世界的一般消費財メーカーのユニリーバなども、IBMのプラットフォームに参加しています。IBM Food Trustは多くの企業からのニーズに応え、ブロックチェーン技術を商業化することに成功しました。IBM Blockchain Platformでは、$0.29 USD/1 時間の仮想プロセッサー・コア(VPC)の定額料金を支払うことで利用できます。スーパーマーケット企業のなかでも世界第2位と名高いAlbertsons Companiesも、IBM Food Trustのシステムを導入した企業の1つです。全米でも2000店舗を超えるスーパーマーケットを展開しているAlbertsons Companiesは、膨大な量の食品の管理にIBM Food Trustの技術を活かしています。
IBM Food Trustは食の信頼性を牽引し続ける
消費者にとって、安心で安全な食べ物を口にしたいというのは当然の欲求です。IBM Food Trustは、そのような消費者のニーズに応えるサービスを開発しました。IBM Food Trustの食への取り組みは、多くの企業にとって今後も目が離せないものとなっています。