マイクロペイメントの巨大なチャンス Libraの場合

2019.12.19 [木]

お金とは何か#17
マイクロペイメントの巨大なチャンス Libraの場合

マイクロペイメントの巨大なチャンス Libraの場合

前の記事に続きLibraのホワイトぺーパーにLibraが生み出す機会として6件列挙されているものの続きを解説します。2件まで前記事で解説しましたので、3件目から続きを考えていきます。

  • グローバルに、オープンに、瞬時に、かつ低コストで資金を移動できるようになれば、世界中で多大な経済 機会が生まれ、商取引が増える、と私たちは考えます。

この説明に国際送金手数料について膨大な資料で説明するとわかりにくくなるので、ここではグローバルと書かれていますが、日本国内だけに限っても今の金融サービスのコストが安くなると経済機会が拡がるであろうとこから説明していきます。

現在、インターネットバンキングでは同一銀行内においては振込手数料無料となっている場合が多くなってきています。ところが現在でもそれ以外のATMをつかった振込では、3万円以下の振込でも200円から400円程度の手数料がかかることが調べるとわかります。各銀行ごとの同一銀行の場合、同一銀行の同一支店の場合(この場合は手数料無料が多い。同一銀行でも他の支店だと手数料かかることがほとんど)、他の銀行との取引の場合、またそれぞれに金額で区分けされていて、料金体系が非常に複雑になっています。

これでは、例えば200円程度の送金をすることはできても、気軽に送金する気にはなれないですね。

何故なら、自分がチップのように200円送って応援したり、感謝を示したい人よりも多くの手数料を別に応援したいわけでもない金融機関にとられてしまうのですから。

それに対して、例えば、ネット上のライブサービス(例、YouTube live, 17Live 等)では気軽に100円程度から投銭が行われています。既にこのようなサービスは拡がってきていますが、これがさらに外国への投銭も行いやすくなったら、今よりさらに大きな経済活動になっていくことでしょう。

これは一例に過ぎなくて、大まかに言ってですが、1万円以下の海外送金どころか、国内送金ですら手数料を考えるともったいないから、もっとまとまった金額になってからしようと思うことが多かったと思われます。これが100円でも気軽に十分に少ない手数料で、世界中に送金できるとしたらどうでしょうか?例えば日本のアニメファンは世界にいますが、応援したくても簡単に小額を送金する方法がなくて諦めているファンも多いのではないでしょうか?
その人たちが簡単に送金できるようになったら新しい経済機会が生まれるはずだと思うのです。

現在は人気ユーチューバーも収入の多くはユーチューブを運営しているグーグル社からもらっている割合が多いと思われます。今後、個人対個人で小額での送金が少ない手数料で、気軽に行える機会が拡がってくると、例えばグーグル社からの収入では生活費を稼げないようなユーチューバーでもファンからの小額送金を集めることで生活できるようになるかもしれません。お金の流れが大きく変わってくることも想像できるのではないでしょうか?

これは一例に過ぎません。“ローバルに、オープンに、瞬時に、かつ低コストで資金を移動できる

ということが実現されれば、間違いなく若者達から、そんな手があったのかという新しいビジネスが生み出されるはずです。

  • 人々は次第に分散型ガバナンスを信頼するようになる、と私たちは考えます。 

これはLibraのホワイトペーパーの中で語られていることから、“新時代のお金について”人々は分散型のガバナンスを信頼するようになるということでしょう。“新時代のお金”と明言しなかったのは、今のお金のほとんどを発行している、国と中央銀行をこれ以上刺激したくないという思いがあったのかもしれません。

“ガバナンス”とは日本語では“統治”のことですが、日本語の統治よりもっと広い意味があります。

政府を英語でいう“ガバメント”とは対照的な統治として位置づけられています。ガバメントは政府が上の立場から行う、法的拘束力のある統治システムのことです。一方、ガバナンスは組織や社会に関与するメンバーが主体的に関与を行う、意思決定、合意形成のシステムのことを指しています

例として“コーポレートガバナンス”を考えてみます。これは、株主や経営陣による企業の管理、統治という意味も含まれていますが、企業の利害関係者(株主、経営者、従業員、取引先など)の主体的な作用による、意思決定、合意形成のシステムと言ったほうが本来の意味に近いでしょう。

ですから、ここではLibraのホワイトぺーパーを書いた人たちはあえて曖昧に表現している可能性もありますが、法的な拘束力を持たなくても、このLibraに関係する人達の意思決定、合意形成により作られているシステムを、中央集権的に意思決定されている、現在の法定通貨より信頼するようになることを私たちは信じています。”と主張していると理解しても良いのではないかと私は考えます。

国家とは、その法律が及ぶ範囲そのもののようなものです。そして2019年現在、世界は国家間のやり取りで決まっていることがまだまだ多いですから、こう宣言することは大きいことです。

そして分散型ガバナンスこそ、ビットコインに始まりそれを実現するために作られたブロックチェーンの一番強い思想的背景です。

実はこれが本当に信頼されてくるのかブロックチェーン側だけをみてもわかりません。なぜなら、中央集権的なものへの対抗として生まれてきたのが分散ガバナンスの概念だからです。分散ガバナンスによりつくられた通貨のメリットとデメリットは、中央集権的な中央銀行により発行された現在の法定通貨のメリットとデメリットと比較してこそわかるものだからです。

このLibraについて多くの中央銀行が短期間で真剣な議論の対象にしているといるということは、皮肉なことに中央銀行こそがこのLibraの脅威と可能性にいち早く気が付いたということなのだと私は考えています。

Libra自体が成功するかどうかは、不明な部分も多いですが、このような計画を民間企業が作って政府と中央銀行の立場を危うくするような脅威を感じさせている事実が一番大きいことなのではないかと思います。
例えば仮にLibraが失敗したとしても、より成功確率の高いプランをAmazonが出してきたというようなことが今後続くことも十分あり得るように思えること。それが繰り返えされればやがて、国家を中心として成り立っている現在の世界の仕組みが大きく変わると思うからです。

それがここで書かれていた。“人々はやがて分散ガバナンスを信頼するようになる”ということだと思うのです。

次回もLibraの生み出す機会について続けて書いていきます。

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