フェミニズムや政治問題などの社会性のあるテーマを発信するインディペンデントマガジン『HIGH(er) magazine』。
同誌の主宰であり、編集長を努めているharu.は、この誌面や自らの活動を通して何を伝えようとしているのか。
アート系プロジェクトチーム〈ArtHub.jp〉代表の野呂 翔悟氏が、彼女の結婚観、大切にしたいこと、
今後作りたいという会社の姿について訊いた。
最近そういう生き方についてもすごく考えるんですけど、結婚ってすごく怖くないですか。
ーどういうところがですか?
昔のように30年ぐらいしか生きられない時代だったから、一人の人に添い遂げられるかもしれない。
でも今は寿命が伸びているから、30年のフェーズを3回くらい繰り返すことになりますよね。そんなに長い間、一人の人間に添い遂げるって変じゃん、って。
私は愛情が溢れ出てるのに、一人だけにずーっと愛を与え続けるって、すごく不自然に感じてしまうんです。
ーなるほど。結婚という制度の存在意義がよく議題になることもありますね。
「今と変わらないんだったら結婚してもいいじゃん」って結婚という形にこだわる人もいるでしょうけど、「変わらないなら、変わらないでいいじゃん」とも思う。
保険とか国の制度に合わせるんだったら、夫婦である方が都合がいいことがあるかもしれないけど、そのときはそのときで結婚すればいい。
きっと私は、いつでも羽ばたきたいんですよね。どんな制度にも縛られたくないと思ってしまう。
結婚したいと強く思った日には突然自分からプロポーズしちゃうこともあるかもしれないけど。
ー結婚して子供を産んで家を買って…という昭和的価値観がどんどん変わってきている中で、「何に価値を置けばいいのか」が、みんながわからなくなってきています。
haru.さんにとって大切な価値観とはどんなことでしょうか。
「いつでも逃げられる」という人生のモチベーションは、私にとってすごく大事です。
結婚しなきゃいけない、何歳までに子どもを産まなきゃいけない、とかそういう価値観に縛られているから、会社を辞めにくいっていう話も聞きます。
そういう呪縛から解かれたら、いつだって仕事を辞められるし、好きなときにアフリカ行けばいいし、結婚相手が二人いる人生を歩むかもしれない。
そういう自由な選択ができるようになることが大事だと思います。
ーどうすれば価値観が普及する社会になるでしょうか?
ハイアーもそのためのツールの一つですけど、最近は、ちょっとシステムの違う会社を作ろうと思っているんです。
ーどんな会社ですか?
ちゃんと休むことに価値を置く会社です。
子どもを産みたい人は産めて、いつでも戻ってこれて、ちゃんと育休が取れる。残業したらちゃんとそのぶんのお金を出すとか、基本的なところができてない企業が多すぎます。
もしそれが会社という形でできないならすぐやめて、村を作ろうかな。みんながみんなの子どもを教育するような社会です。
ーそういう社会になっていくと、ブロックチェーン技術の親和性が高まってくると思っていて。ブロックチェーンによって、改ざん不可のサービス、表現ができている。
「note」にお金を払うのに近いですか? noteが出てから文章に価値がついた気がします。
ーそうですね。noteもお金を払わないと見られないというセキュリティによって、サービスの信頼性が担保されています。
ECサイトによくある「ポイント」だってインターネット上の数字ですけど、改ざんされないようにセキュリティをかけているからこそ、価値がでる。ブロックチェーンを使えば誰でもこのポイントのような仕組み自体がつくれるわけです。
みんなが独自のECポイントを作れるというか。その独自のポイントを価値だと思うコミュニティを作ることで、その中だけで売り買いが成立する世界が作れるんです。
私が描いているような「村」が増えそうですよね。
ーしかもその村には”主”はいないんです。ECサイトのポイントは運営主が「このポイントは無効です」と言えばそれに従うしかないけれど、ブロックチェーンにはそれがない。
なるほど。そうなると、友達が持ってる独自ポイントと私の独自ポイントが完全に一致していなかったら交換できないんですか?
ー間をつなぐものがあればできます。「交換コミュニティ」もできていくと言われていて。
それは、オンラインだけの話ですか?
ー今はまだ課題が多いですが、いずれ現実でもできるようになるはずです。
アートの世界では、ブロックチェーン上でアートを管理するというのも増えていて「この作品を誰がいくらで買った」というデータが残っていて、それによって価値を担保する実験をしています。
ということは、オンラインにつながるものを持っていなくても、その人の情報がブロックチェーンに含まれるっていうことはあるんでしょうか?
例えば、携帯もパソコンも持っていないけれど、私がその絵を買った情報はブロックチェーンの中に組み込まれる、とか。
ーそうなると、その人は絵を買えないかもしれない。例えばIDを持ってないととか、そういうことによって。
じゃあ現金で払ったとしても、それがブロックチェーン化されて払われたという変換を何かでしなきゃいけない?
ーそうです。それは、今後キャッシュレス社会になっていく流れでゆっくり変わっていくはずです。
ネットと一緒で時間をかけて浸透していくと考えています。最初は、ネットも「2ちゃんねる」くらいしかなくて怪しまれていたのが、今ではネットを使って稼ぐことが当たり前になっているように。
じゃあ5〜6年後、私が三十歳になった頃、ブロックチェーンは普通になっているかな。
ー可能性はあります。
だから、haru.さんの言うような形態の会社や村というのはこれからの時代の流れにすごくマッチしている。ブロックチェーンの浸透によって、世の中はコミュニティ形成が盛んになっていく可能性が高いですから。
なるほど。なんとなくわかりました。私が思い描いている会社や村のシステムも、ブロックチェーンがあれば夢物語じゃない。
ーまさしくそうですね。
今、ふと思いましたけど最近CDをフィジカルで出さない人が多いじゃないですか。配信だけ、というアーティストも増えてきている。
それまでオンライン上の曲は価値としてはCDの下のような扱いだったけど、最近それが変わってきたように思います。
一方で、オンラインでしか聞けない場合「その曲を大切にする方法」がわからない自分もいるんですよね。
愛着はあるんだけど、大事にする術がわからない。だから、画面をずっと見ている(笑)。
ー人間が触られるもの、フィジカルに愛着を感じるという性質は今後も変わらないでしょうね。
だからすべてをネット化・デジタル化する必要はなくて、仕組みだけブロックチェーンにして、物はアナログで楽しむのもいいと思います。
ブロックチェーンで、いろんなことが起きそうですよね。もうだいぶ前の話ですけど「SoundCloud」のように、無名のアーティストがアップできるコミュニティができたことによって、音楽業界に変化が起こった。
最近ではアーティスト自身が個人のレーベルをもっていることも多いみたいだし。そういった現象が音楽だけじゃなくていろんな世界で起きていくのは、すごく楽しそうですね。